安保法制や慰安婦問題の電撃合意など進むところ敵なしの安倍晋三・首相が次なる照準に定めたのが衆参ダブル選挙と憲法改正だ。それが意味するのは「大勲位」中曽根康弘・元首相超えである。
1月10日、NHKの『日曜討論』に登場した安倍首相は夏の参院選について、「自公だけでなく、改憲を考えている責任感の強い人たちと3分の2を構成していきたい」と、それまでの「与党で過半数」との“低すぎる目標”を大幅に上方修正してみせた。
国会答弁でも、「来るべき選挙で政権構想の中で憲法改正を示す」(12日)と踏み込み、ここでも攻めの姿勢を鮮明にした。
しかし、憲法改正の発議には参院選で大勝して自公プラス改憲政党で3分の2の議席を獲得するのが至上命題となる。公明党はもちろん自民党内でも慎重論はあるが、そうした声は“雑音”としかとらえていない。そのために視野に入れているのが衆参同日選挙だ。政治評論家・有馬晴海氏が語る。
「安倍さんの悲願は歴代の総理・総裁が誰も手をつけることさえできなかった憲法改正です。それを自分の手でやるために再登板に挑んだ。野党の体制が整っていない今回の参院選は3分の2を得る最大のチャンスであり、与党に有利なダブル選挙を打つことで衆参での圧勝を考えているとみて間違いない。
自民党議員たちはすでにダブル選挙に向けて動き出しており、政府は地方振興策で自治体にプレミアム商品券を配らせたり、高齢者への3万円支給を決めるなど、あらゆる手を打とうとしている」
自民党の歴代首相の中で、「自主憲法制定」を強力に推進しようとしたのが安倍首相の祖父である岸信介氏、そして中曽根康弘氏だった。
中曽根氏は岸退陣後の1961年、自民党が改正案を持たない時代に前文と11章124条からなる独自の憲法私案(高度民主主義民定憲法草案)をまとめるなど早くから改憲派の旗手として知られる。