【著者に訊け】村田沙耶香さん/『消滅世界』/河出書房新社/1728円
【あらすじ】
男女が愛し合い、結婚をして性行為をした結果、子供が生まれる──私たちが当たり前に考えているそれは、もはや「昔」の話だった。両親の性行為で生まれた「雨音」が住む世界の「正しい」性は、女性がパートナーから人工授精を受けて出産をする。セックスは世界からなくなりつつあるのだ。さらに実験都市・千葉では、「家族」ではなく「楽園システム」で人類が繁殖していた。
夫婦の間のセックスレスが社会問題のようにいわれるが、『消滅世界』で描かれているのはその先の未来で、夫婦の間のセックスは「近親相姦」とタブー視され、子供は人工授精でつくるのが当たり前という世界だ。
「書き始めるときは、セックスが消えつつある世界でセックスしているイメージだけがありました。セックスがなくなっても繁殖できる、そういう科学技術のある世界で、セックスのことを全然知らない人が、本や古い文献を読みながら試みているへんてこな光景が浮かんで」(村田さん、以下「」内同)
『消滅世界』の前に書いた短編(「清潔な結婚」)で、婚活サイトで知り合い、セクシャルなことを一切しない約束で結婚した夫婦を描いたとき、読者から「共感する」という感想をもらうことが割合多かったそうだ。
「思ったよりも突拍子もないことじゃないことなのかな、と。だったら、だんだんとそうなりつつある、みんながリアルだと感じるもののさらに先を行く世界に、リアリズムのまま主人公を置いてみたらどうなるだろうと思ったんです」