「断捨離」とは、物への執着心を捨て、身の回りをスッキリさせることで生活や人生に調和をもたらす生活術や処世術のこと。断捨離を突き詰め、物を持たない暮らしを実践する人を「ミニマリスト」と呼ぶ。生活に使う物を限りなく減らし、「最小限の物」だけで暮らす人々だ。2015年の流行語大賞にもノミネートされた。
博報堂若者生活研究室アナリストの原田曜平さんが解説する。
「今は雇用が厳しく、お金も使いにくい状況で、処世術として、必要以上の物を持たない若い世代が登場しました。自宅にテレビや冷蔵庫などの家電が一切なく、スマホとパソコンのみで暮らすような若いミニマリストが増えています。
高級車やブランド品を持つことがステータスであり、物質的な豊かさへの信奉が強い、団塊の世代からバブル期前にかけての人々にしてみれば、驚くべき傾向でしょう」
しかし今、全世代の女性が「持たない生活」に熱視線を送っている。ブームの発端は、片づけコンサルタントである近藤麻理恵さんの著書『人生がときめく片づけの魔法』(2010年、サンマーク出版刊)だった。
1つ1つの物に対し、「ときめくか」「ときめかないか」と問いかけ、ときめく物だけを残すという、片づけ法を紹介した同書は、シリーズ累計で200万部を超えた。同書は米国でも売れ、近藤さんは米『TIME』誌にて、世界で最も影響力のある100人に選ばれ、現地では「スパーク・ジョイ(ときめき)」が流行語となっている。
また、2014年に刊行されたジェニファー・L・スコットの『フランス人は10着しか服を持たない~パリで学んだ“暮らしの質”を高める秘訣~』(大和書房)は、シンプルで厳選された物だけに囲まれるパリ流の上質かつ質素な暮らしを描き、60万部のベストセラーを記録した。
都内在住のA子さん(43才・派遣社員)は、3年前に前述の『人生がときめく~』を読んで、断捨離を始め、ミニマリストの道を歩んでいる。
「以前は雑貨屋が好きで小物を買い集めていましたが、近藤さんの本を読んで感動し、観葉植物やキャンドルなどすべて処分しました。大きなチェストやテレビ台なども迷わずに捨て、洋服類も4分の3を処分しました。
“ストレス買い”の反対で、物を大量に処分することで気持ちが晴れやかになるんです。おかげで無駄遣いがなくなって貯金が増えたし、部屋の汚れが目立つので掃除をマメにするようになりました。小学生の息子も影響を受けて、余計な物を欲しがらなくなりました。まさに一石四鳥ですよ」