1月26日、天皇皇后両陛下が日本との国交正常化60周年を記念した友好親善のため、フィリピンを訪問された。そして、フィリピンを訪問されるのは、今回が初めてではない。今から54年前の1962年、当時皇太子だった陛下と美智子さまはフィリピンの地を踏まれている。
終戦から17年の月日が流れていた。しかし、日本に対する憎しみの念を持つ人も多いといわれ、おふたりを迎えるフィリピンの首都・マニラの空港や沿道の警備には、警察・軍隊から約7000人が動員された。
その心配をよそに、集まった約10万人のマニラ市民は歓迎ムードにわいていたという。
「おふたりはフィリピン建国の父といわれるホセ・リサールの記念碑のほか、国立の児童保護施設などを訪問されました。施設では美智子さまがご自分で選び持参された折り紙などを贈られました。
また、戦争未亡人との懇談の機会があり、美智子さまは“戦争孤児たちをどのように面倒を見ていますか。孤児たちが日本に留学できるようにお手伝いでもできれば…”と語られました」(当時を知る元皇室記者)
おふたりの慈しみのお姿は、フィリピン国民の心を動かした。同行した日本人記者に「ミチコを見たら日本に行きたくなった。帰るときに連れて行ってくれないか」と話しかけてきた若い女性もいた。
「ご帰国後《日比親善に美しい架け橋》という見出しで大々的に報じられるなど、あのご訪問はおふたりにとっても充実したお時間だったことでしょう。ですが、昭和天皇のご名代だったとはいえ当時はまだ皇太子でした。
特に海外での慰霊の場合、皇太子という立場と、天皇という立場で訪問するのでは大きな差があります。ですから“天皇として、もう一度”というお気持ちを陛下はずっとお持ちだったのではないでしょうか」(当時を知る元皇室記者)