昨年はパリで同時多発テロが起きたのに続き、アメリカやイギリスでもテロが次々と起きた。インテリジェンス先進国も「穴だらけ」と指摘するのは、作家の落合信彦氏だ。以下、落合氏の解説。
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昨年11月に起きたパリ同時多発テロに引き続き、12月にはアメリカとイギリスで相次いでテロが起きた。
12月上旬にカリフォルニア州サンバーナディーノで夫婦が銃を乱射した事件では、14人が犠牲となった。この死者数は、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件以降、アメリカで発生したテロ関連の銃乱射事件としては最も多いものだった。
妻は犯行とほぼ同時刻にフェイスブックに「ISへの忠誠」を誓う書き込みをしていた。2人の自宅からはコーランのほか、ライフルと拳銃各2丁、5000発以上の弾丸、さらに12個ものパイプ爆弾が見つかっている。
夫婦のうち、妻のマリク容疑者はパキスタンの裕福な家庭に生まれ、父親の仕事の都合でサウジアラビアで育った。その後、2007年に故郷パキスタンに戻り、イスラム教の学習に熱心になったという。
アメリカで生まれた夫のファルーク容疑者とイスラム教徒が多く集う出会い系サイトで知り合ったのは2013年。そして2014年7月には「K-1ビザ」(婚約者ビザ)でアメリカに入国し、すぐに結婚した。それから1年あまりで事件を起こしたわけだ。
周囲の住民は「過激思想を持っている兆候はなかった」と語っている。しかし大量の武器を集め、夫も友人とともに2012年に別のテロを企てていたという報道があったことからしても、アメリカの情報機関がマークすることは可能だったはずだ。
今回のケースで、当局が監視機能を果たせなくなっていることが顕在化した。監視網が「穴だらけ」になっているのだ。