必要最低限のものだけを所有し、それ以外のものは一切手元に置かない「ミニマリスト」が話題だ。本やテレビも持たず、食器も家族の人数分だけ。最新の家電など持っているはずもなく、スマホとパソコンだけで生活をする──そんなライフスタイルを貫くミニマリスト。しかし、少々問題があるのではないか? との声も少なくない。博報堂若者生活研究室アナリストの原田曜平さんはこう話す。
「日本はこの20年ほどで極端な合理化が進みましたが、世の中には“必要な無駄”もあります。あまりに物を少なくしようとして度を越したミニマリストになると必要な無駄まで省いてしまう。そこは注意すべきです」
昨年、雑誌『AERA』(2015年6月22日号)の特集記事「結婚はコスパが悪い」が話題となった。記事には、恋愛や結婚は仕事と比べて成果が不確かであり、コストパフォーマンス(費用対効果。コスパ)が悪いと考える結婚適齢期の男女が数多く登場した。
交際していた男性のために仕事をセーブして尽くしたが、破局したら何も手元に残らなかった、という36才女性は以下のように発言した。
《同棲までした彼とも結局、結婚には至らず。これほど無駄な時間はないと思った》
また、39才女性は「子供が欲しい」という30代半ばの同僚女性が、半分以下の年収の男性と結婚したことについて、こう切って捨てた。
《焦ったばかりに、あんなのに捕まって。私から言わせればポンコツです。子どもを望まなければ、今すぐに結婚しなくてもいい。メリットがなにもない》
SMAP・香取慎吾(38才)主演のドラマ『家族ノカタチ』(TBS系)でも「結婚はコスパが悪い」というテーマが描かれ注目を集めている。
「一人口は食えないが、二人口は食える」なんて話はずいぶん遠い昔になってしまった。
コラムニストの辛酸なめ子さんは「コスパ重視派」に対し、こんな疑問を呈する。
「結婚を費用対効果やメリットで考える人は、今を楽しめていない。今の瞬間を生きていない気がして、もったいない気がします。それに結婚に縁がない人は“結婚は無駄だ”“私はミニマリストなのよ”と思い込むことで自分のプライドを守ることができます。結婚できない言い訳としてコスパという言葉を使えて便利なのかもしれません」