「欧米諸国が数百年かけて構築した近代的な社会システムを、日本はわずか数十年で作ってしまったでしょう。その過程で、社会保障のほとんどをイエ制度に結びつけてしまった。ところが経済成長と同時に核家族化が進んで、まず地縁血縁が失われましたよね。離婚や再婚が増えて、家族という単位がどんどんばらけていく中で、いろんなひずみが弱い者に集中していく。その構図は子供の貧困や虐待にも共通すると思います」
家族という幻想に縛られていたのは、杉山さん自身も例外ではないという。第3章では自分の家族を取材対象として照射した。
「息子が6年間不登校かそれに近い状態でしたから、やっぱり自分のことも書いた方がフェアだと思って。私はすごくラッキーだったんですよ。力のある医師にかかることができたし、学校側とも対話ができた。きちんと外部の手を借りることで、子供本人の望みを聞き取って、共同体の中に戻すことができた。その一例として記録したつもりです。
家族というものが不必要だとは思わないけど、代々続く『イエ』とは別の形の家族があってもいいと思う。たとえば子供が10代になった時に、安心して家出できる先がいくつあるか。親とは別の価値観を持った大人の手も、やっぱり必要です。いくつかの価値観に出会わせてあげれば、子供は自分で選ぶ力がありますから」
(取材・文/佐藤和歌子)
※女性セブン2016年2月18日号