一方、不正会計問題に端を発し、2016年3月期の最終損益が過去最悪となる7100億円の大赤字に転落する見通しの東芝。財務の健全性を示す自己資本比率は3月末に2.6%まで落ち込む見込みで、いつ経営破綻してもおかしくない「危険水域」に入っている。
室町社長は決算会見で医療機器子会社(東芝メディカルシステムズ)の株式売却や家電・パソコン事業の他社統合を急ぐことを明言し、さらなる人員削減も辞さない構えだ。自らも月額報酬90%返上を継続するほか、執行役の月額報酬の減額幅も最大40%にするなど、痛みを伴う構造改革に理解を求めた。
だが、自身の出処進退については明言を避けた。昨年9月、緊急登板で社長に就任した際、「任期は1年なのか2年なのか、今はお答えする段階ではない。ただ、3年ということは、おそらくない。危機を乗り越えたら後進に譲る」と話していたが、今回の決算会見では「2016年度のV字回復を目指し、全力で力を結集させていきたい。それが私の責務」と述べた。
もちろん、シャープと同様に事業の切り売りだけ果たして業績回復軌道に乗せないまま退けば、単なる“敗戦処理”の経営者で終わってしまう。だが、東芝の場合は旧態依然の企業風土を踏襲するかのような不可解な人事制度も残ったままだ。
同社は“新生東芝”を築くために相談役制度の廃止を決めているが、元社長で現・日本郵政社長の西室泰三氏と日本商工会議所前会頭の岡村正氏が相談役を退任する代わりに、新たに設ける「名誉顧問」に就任するという。
室町社長は、「名誉顧問には、会社の経営とは一線を画し、社外の活動で東芝の存在感の維持向上を図ってほしい」と述べたものの、2人には専用の執務室や送迎車がつくという。さらに、公表はされなかったが顧問報酬も支払われる可能性が高い。
経済誌『月刊BOSS』編集委員の関慎夫氏も、この決定には首をひねる。
「西室氏は危機的状況に陥った古巣の東芝で、引責する意思を固めていた会長の室町氏を慰留して社長に推したといわれています。しかし、いつまでも社内人事に介入して自分の“居場所”を確保することは、今後の東芝にとってガバナンス(企業統治)強化には繋がらないはずです。
ただでさえ会社側が不正会計を主導したとされる旧社長ら5人を訴えている中、現経営陣が相変わらず“長老”たちに配慮する人事を続けていたら、社内外に示しがつかないと思います」
室町社長自身は外部で構成する指名委員会(委員長/小林喜光・三菱ケミカルホールディングス会長)の“信任投票”によって続投や交代が決められることになっているが、1月に実施した際も、その結果については「非公表」だった。