「構造改革を全力でやり切ることが社長の責任」――。経営再建の途上で崖っぷちに立たされているシャープの高橋興三社長と東芝の室町正志社長は、それぞれ2月4日に開いた2015年度第3四半期決算発表の席上で、今後の進退について似たような発言をした。
シャープ支援を巡っては、これまで国が出資する官民ファンドの産業革新機構と、iPhoneをはじめ電子機器製造を請け負う台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が激しい「買収争奪戦」を繰り広げてきたことは当サイトでも度々報じてきた。
その結果、革新機構側のおよそ倍にあたる約6500億円もの出資額を提示した鴻海側になびく格好となった。「シャープに多額のカネを注ぎ込んできた主力銀行にとっては背に腹はかえられない。海外への技術流出懸念よりも目の前にぶら下がる大金のほうが大事だった」と、業界関係者は見る。
シャープの経営陣にとっても、鴻海案のほうが魅力的だったことは確かだ。高橋社長は会見で、「単に資金だけの問題ではない」としたうえで、支援に名乗りを挙げた両社に4つの要望を出してきたことを明かした。
その中身は技術の海外流出を防ぐ点、事業カンパニーごとに分解せずシャープのDNAを残すことのほか、「生産拠点を含めて従業員の雇用の最大化を維持すること」が掲げられた。つまり、高橋社長以下、役員の首も繋がったままという契約条件が盛り込まれた可能性もある。経営陣の一斉退陣を求めていたとされる革新機構とは真逆の“温情提案”だ。
そんな裏交渉もあってか、高橋社長は経営続行にむしろ意欲的なコメントを残した。
「(支援先との)契約後に辞めるつもりですか、ということなら『ノー』です。(経営不振を招いた)大きな責任を感じていますが、シャープが将来に向かって存続し、世の中のためになることを考えている。そこまで決めたので、あとは勝手にやってくださいという立場にはなく、単純に放り出すつもりはありません」