日韓両政府による慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な合意」は、海の向こうで新たな反日デモの火種となった。オーストラリア・ブリスベンやアメリカ・ニューヨーク、アメリカ・グレンデール等で日本に対する抗議デモが発生したのだ。これからこうした事態にどう対処すればいいのか。
一昨年の夏、オーストラリア・シドニー郊外で起こった韓国系ロビイストらによる「慰安婦像設置」運動に対し、現地在住の日本人として異を唱え、設置を阻止した山岡鉄秀氏が運動について振り返る。
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1月6日、豪州・ブリスベンの日本総領事館前に詰めかけたおよそ15人の若い韓国系住民は、〈日本が強要した性奴隷に抗議する〉〈日本は慰安婦に心から謝罪せよ〉などのプラカードを掲げ、「20万人の女性が性的な奴隷にされた」と訴えるビラを配った。
世界の反日団体が勢いづくなか日本人はどう対処すればいいのか。そこで、私たちが豪州で慰安婦像設置を阻止した経験が教訓になろう。
豪シドニー近郊のストラスフィールド市議会は2014年3月に突然、豪州初となる慰安婦像の設置の検討を始めた。人口4万人の同市でおよそ1万人を占める中韓系住民が日本の戦争犯罪を糾弾するため、市議会に働きかけたのだ。
その手口は米国での慰安婦像設置運動と共通する。彼らはまず、市議会の会議に積極参加して地域密着を図り、発言権を得るため議員に献金を繰り返す。次には同胞を地方選挙に出馬させ、当選させる。
政治基盤を固めたら次に市長や議長などリーダーを巻き込む。何百人もの中韓系住民を集め、「日本の蛮行を許さない」と反日集会を開き、市や州の議員を呼んでスピーチさせる。そして、票ほしさにすり寄る議員に「慰安婦像を設置したい」と持ちかけるのだ。
特に韓国系は母国で受けた反日教育により刷り込まれた“歴史観”を移住後も持ち続け、その民族的鬱憤を晴らす機会を常に探しているように見えた。まったくの被害者としての主張は異国でも同情されやすく、また、そうした糾弾に日本は跪いて謝ってくれるから批判もエスカレートする。そんな屈折したメンタリティが、韓国系の慰安婦像設置運動を支えている。
私たちの抵抗で市議会の判断が先送りされると、中韓系住民を中心とする推進派はなりふり構わぬ反撃に出た。
彼らは駅前にテントを張り、通行人にビラを配って署名を求めるキャンペーンを展開。「戦時と平時における女性への暴力に反対する」と大きく書かれたビラの下部には、小さな字で「豪州では毎年55人以上の女性がDVで殺される。戦時中には20万人以上の女性が性奴隷にされた」と記されていた。戦時の慰安婦問題と現在のDVを強引に結びつけ、誰からも反論されようのない「女性の人権問題」として署名を集めていたのだ。
反日団体の一方的かつ派手なキャンペーンに不意を突かれた日本側は、ついリアクションが鈍くなる。しかも日本人は反論が苦手なので、彼らの「やりたい放題」になる。
しかし、私たちは海外に誤った歴史認識に基づく慰安婦像が立ち、日本人や日系人、その子女が不当な差別に遭うことを防ぐため戦った。この間、反対派の日本人男性がショッピングセンターに停めた車の前輪をナイフで切り裂かれたり、反日団体の主張を真に受けた韓国人の父親が「韓国に帰国して軍隊に入隊して日本と戦う」と激昂して家庭不和になったりした。慰安婦像の設置騒動は現地で平和に暮らす住民を分断した。