ある資産家女性の遺産を巡る、「家政婦VS実の娘」の争いで、言い渡されたのは、実の娘ではなく、血のつながらない家政婦の全面勝訴だった──。
資産家女性・吉岡初子さん(享年97)は、全財産3000万円を家政婦に残すと遺言を残し、2011年に死去。娘たちはその遺言を無効として家政婦に一銭も渡さなかったため、家政婦が金銭を支払うよう主張していた裁判だ。
初子さんと家政婦の間には血縁関係はまったくない。なぜ、家政婦は裁判を決意したのか、娘たちにはなぜ遺産が残されなかったのか、血のつながりのない家政婦とはいったいどんな存在だったのか。女性セブンが入手した裁判記録には、50年以上にわたる、“泥沼の資産争い”が記されていた。
裁判を起こした石川美津さん(仮名・68才)は、1947年に岩手県で生まれ、中学を卒業した1960年、就職のため上京した。以来、50年にわたって吉岡家に住み込みで家事手伝いをしていた家政婦だ。
美津さんが仕えた吉岡家は映画界では有名な一家だった。美津さんは14才から、初子さんの父・吉岡重三郎氏のもとで働き、重三郎氏の死後は初子さんと夫・定美氏に仕えた。美津さんは結婚をすることもなく、1984年に定美氏が亡くなってからも、住み込みの家政婦として初子さんの身の回りの世話を続けていた。
裁判資料によると、美津さんは、《定美が亡くなる少し前から無給で働くようになった》というが、それは定美氏が亡くなる1年前に《初子が亡くなる際には一定額の退職金を支払う旨明言》しており、《初子は、自身が亡くなった際には自身の財産の全てを退職金代わりに(美津さんに)遺贈することにより亡夫の遺言を実現させようとした》のだ。