これまで日本に対して強硬な外交姿勢だった韓国が、年末の日韓合意で急に軟化したように見える。拓殖大学教授の呉善花氏は、この「歩み寄り」の裏には、アメリカの存在と韓国の窮状があると指摘する。
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昨年末の電撃的な日韓慰安婦合意について、日本政府は「最終的かつ不可逆的な解決」と胸を張ったが、韓国サイドの反応は予想どおりだった。
元慰安婦や韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)だけでなく、梨花女子大などの学生や一般市民まで次々と合意に反発して立ち上がっている。
「長年苦しんできた歴史を、ちっぽけな金額で売り飛ばされてたまるか」と、かえって怒りを増長させてしまった。
親北朝鮮の最大野党「共に民主党」の文在寅代表は「今回の屈辱的な合意は無効」と断じた。
反日で国を束ねる韓国にとって、慰安婦問題は解決されては困る問題であり、何があっても永遠に燃え盛る炎のようなものだ。李明博前大統領は竹島を反日カードにしたが、朴槿恵大統領は慰安婦問題を普遍的な「女性の人権問題」として世界にアピールしてきた。保守派の彼女には、親北朝鮮の野党支持者を取り込むねらいもあった。
朴槿恵にとって慰安婦問題は政権を維持する最大の反日カードなのに、なぜ日本との合意を急いだのか。
◆朴槿恵大統領を叱責した
最大の理由は米国の圧力だ。南シナ海の人工島建設やサイバー攻撃など、「力による現状変更」の意志を隠さない中国と政情不安定の北朝鮮は東アジアの安全保障にとって大きな脅威であり、日米韓が緊密に連携する必要があるが、「米中二股外交」を展開する韓国は米国の制止を聞かず中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)に参加し、昨年9月、北京で開催された抗日戦争勝利70年記念行事には朴大統領自ら出席した。
「慰安婦問題が解決しない限り日韓首脳会談は実現しない」と明言する朴槿恵は米国にとって実に厄介な存在だった。
言うことを聞かない彼女に怒り心頭のオバマ大統領は昨年10月、ホワイトハウスの米韓首脳会談で日韓友好を求めて朴槿恵を叱責したとされる。会談後の会見でオバマ大統領は「(日韓の)困難な歴史問題が解決されることを望む」と厳しい表情で語った。