血液は心臓から動脈を通り全身に流れ、静脈から戻ってくる。心臓から遠い足の血液は運動により心臓に還るが、重力に負けて足先に血液が戻らないように血管の内側には逆流防止の弁がついている。これが加齢や長期間の立ち仕事、出産など環境要因により弁が壊れ、末端の血管に血液が戻ることで、さまざまな症状が起こる。これが下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)だ。
主な症状はふくらはぎで、足の血管がこぶのように膨らみ、足がだるく重いと感じる。さらに末端の血管内圧の上昇から水分が滲み出し、皮下脂肪などがむくみ、新陳代謝が悪くなる。結果、かゆみや皮膚への色素沈着で皮膚自体が茶色になったり、潰瘍を起こすこともある。
菊名記念病院(神奈川県横浜市)の心臓血管外科・下肢静脈瘤センターの奈良原裕センター長に話を聞いた。
「下肢静脈瘤は、比較的多く見られる病気ですが、基本的に命にかかわる病気ではないせいか、治療しないで何年も過ごしてしまうケースが見受けられました。しかし、2013年に下肢静脈瘤に対し、経カテーテルのレーザー治療が承認され、その後ラジオ波焼灼治療も保険収載になり、局所治療が可能になったため、治療を受けられる患者さんが急増しました」
下肢静脈瘤のカテーテル治療は、弁が壊れ、逆流している血管にカテーテルを入れて熱を掛け、血管内皮にやけどを起こし、逆流を止める治療だ。焼かれた血管には、血栓ができることで逆流がなくなり、次第に退縮していく。その先の細い血管の血液は、別のルートで心臓に戻る。
心臓に戻る際に太い血管に血栓ができ、EHITと呼ばれる合併症が起こると、肺血栓塞栓症(はいけつせんそくせんしょう)につながる危険性があるため、焼灼する部位を慎重に見極める必要がある。
カテーテル経由でレーザーやラジオ波で局所を焼灼する方法は同じで、学会や研究では治療成績や合併症の発生に大きな差はないといわれる。