現在NHK連続テレビ小説『あさが来た』で、ヒロインあさのよき母親を好演している寺島しのぶが一転、dTVで配信中のオリジナルドラマでは、不倫に走る主婦を演じている。
ドラマ『裏切りの街』で寺島が演じるのは、自身のサバサバとした男前なイメージとはまったく異なる、優柔不断な主婦の役だ。無気力なフリーター菅原(池松壮亮)と、出会い系サイトで出会い、お互いにパートナーがいることを知りながら体を重ねていくというなんとも大人なドラマとなっている。
もし寺島自身がこのような不倫の状況になったとしたら?
「私は嘘がつけないから、好きな人ができたって言うしかないですよね。それで旦那に捨てられたらしょうがないし。もうちょっとうまく嘘やおべっかが使えたら、もっといろんな役をもらえてるかなって(笑い)。
でも万人に好かれなくていいやって、ある時点で諦めました。例えば保育園には素晴らしいお母さんたちがたくさんいらっしゃるけど、私が同じようにやろうとしても絶対できないので、私は自分のやり方で突き進むしかないし、価値観が同じ人とつきあえばいいんじゃないかなって。
スイッチの切り替えは、本当に早くなりました。朝、家族を見送った瞬間に仕事モードになれます。息子が帰ってくるまでの時間でせりふを覚えるとか、行きの新幹線の中で覚えるしかないとか、毎日が土壇場でギリギリな感じだけど、そのほうが集中力は高いのかな。
私、いつも人生一度きりって思っちゃうんですよ。基本的にすごく欲張りで、何かやってなきゃ気が済まない。子供にもいろんな刺激を与えたいと思うから、疲れていても週末は子供と出かけたいし、主人の仕事柄、いろんな公の場にも出向くようになりました。結婚するまでは、極力ひとりにさせておいてっていう人だったのに(笑い)。
毎日大忙しなんだけど、そっちのほうがオトクかなって。日々クタクタですよ。あっという間だし。今、目の前にあることだけをやっていくっていう毎日ですね」
“忙しい”を理由に日常に流されている人は、多忙な毎日にもかかわらず、まめに更新される彼女のブログを一度覗いてみるといい。移動の車窓から見る景色も自分の中にしっかり取り込む姿勢に、きっと背筋を伸ばして歩きたくなるはずだ。
「この間ひょんなことから10年前の結婚式のビデオを見たら、私、いっぱい笑ってるんですよ。今は毎日、次は何、次は何って頭をフル回転させてるから、険しい顔になってるのかも。だから夫には、『おかえり』のひと言でも、ちゃんと目を見て笑顔を見せるようにしています」と、寺島は爽やかに言った。
撮影■樂滿直城
※女性セブン2016年3月3日号