作家・落合信彦氏は今、この地球上に3つの「戦争の火種」がくすぶっていると指摘する。「米ロ」「朝鮮半島」、そして「サウジアラビアとイラン」だ。カーター政権の国防次官やクリントン政権の国防長官を歴任したウィリアム・ペリー氏も「米ロ戦争」への懸念を隠さない。落合氏が指摘する。
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プーチンは昨年末、ロシアの安全保障戦略の新たな基本方針を示す文書に署名した。そこでは、世界的な課題や国際紛争の解決における「ロシアの役割」が拡大しているとした上で、アメリカを名指しして、「安全保障上の脅威である」と批判した。
一方的なクリミア侵攻を考えれば分かる通り、世界の安全を脅かしているのはプーチンに他ならない。にもかかわらず、「アメリカが悪い」とケンカを売ったのだ。
ロシアは、原油安で収入が激減し、失業率が上昇している。通貨ルーブルも急落し、もはや財政は破綻寸前だ。プーチンは、国内の矛盾を解決し、圧政から国民の目をそらすには戦争を始めるしかないと考えているに違いない。ヒトラーと同様、独裁者は皆そう考えるものだ。
プーチンは、自らの立場を守るためなら戦争など厭わないし、人命を顧みない。なにしろ、自分に都合の悪い人物は次々に“消す”ような男である。
2006年には、もっとも著名なロシアのジャーナリスト、アンナ・ポリトコフスカヤが自宅アパートのエレベーターで4人の暗殺者に射殺された。事件はヨーロッパやアメリカで大きな波紋を呼び、それぞれの政府は透明な事件解決をロシア政府に要請した。私は彼女をもっとも素晴らしいジャーナリストとして尊敬していたので、その後のロシア政府の動きを注視していた。
なぜアンナが殺されなければならなかったのか? それは彼女がロシアという国を救うために、真っ向からプーチンの性格や政策を批判したからだ。何も言えない国民の代わりとして、最前線に立ったのだ。