先ごろ発表された「がんの10年生存率」が話題だ。諏訪中央病院名誉院長の鎌田實医師が、「がん10年生存率」を念頭に、生きる力について考える。
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がんの10年生存率が発表された。国立がん研究センターの研究班が、全国32のがん専門病院でつくる「全国がん(成人病)センター協議会」の協力で、がんの部位別10年生存率をまとめた。
1999~2002年にがんと診断されて治療を受けた人約3万5000例の10年後の生存率を集計したもので、この規模での10年生存率の発表は初めてのことだ。
がんと診断された人のデータを集計・分析・管理する「がん登録」は、がんの罹患率や治療後の経過を知るうえで重要な制度だ。従来、都道府県レベルでの「地域がん登録」は行なわれてきたが、今年1月から全国のデータを収集、管理する「全国がん登録」がスタートした。今後は、さらに大規模な集計が期待されるが、今回の10年生存率のデータからわかることを挙げてみたい。
まず、5年生存率と10年生存率を比較してみよう。食道がんの5年生存率は38.1%に対して、10年生存率は29.7%と9ポイント近く下がる。このことから、食道がんは「5年生きればもう大丈夫」というわけではなく、その後も経過を診ていく必要があることがわかる。
10年生存率を調べることで、ある程度、5年で区切りをつけられるがんと、もっと長期的に診たほうがいいがんが見えてくる。
たとえば、日本人に多い胃がん。5年生存率70.9%、10年生存率69.0%と差が小さい。このことから、胃がんは「5年生きれば完治」と考えていいといえる。ちなみに、ここで使われている生存率は相対生存率というもので、性別、年齢など死亡率に影響する要因を取り除いて補正した数字。つまり、単純にがん患者の予後を比較できる。
10年生存率のデータが、どれほど重要なものか、ご理解いただけただろうか。そのうえで、あえて真逆のことを言うが、実は、一人の患者さんを支えるうえでは、生存率はあまり意味がない。諏訪中央病院の緩和ケア病棟で多くの患者さんを診てきた経験から言えることは、がんにはうれしい番狂わせが起こるということだ。