選び抜かれた77人のサクラが咲いた──。2月10日、東京大学は、今年度からスタートした推薦入試で77人が合格したと発表。同日、京都大学も、初めて実施した特色入試で59人が合格したと発表した。
一般入試とは「別枠」になり、出願者の人物像を重視するといわれる、いわゆるAO入試。AO入試のAOとはアドミッションズ・オフィスの略で、「入学者を選抜するための事務局」という意味だ。
筆記試験のみで選別される一般入試は偏差値偏重になる、と長年指摘されてきた。AO入試はその弊害を克服し、課外活動や志望動機、小論文などで受験生の「個性」を評価しようという試みだ。高校の推薦が必要な推薦入試に対し、AO入試は自己推薦できる。
AO入試は米国の大学入試を参考にして、国内では1990年に慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスで初めて導入された。学力レベルがそれほど高くない大学の入試は「面接」だけで終了することもあるが、通常は「小論文」と「面接」がセットになる。『AO入試・推薦入試のオキテ55』の著書をもつ鈴木鋭智さんが現状を解説する。
「少子化で受験生が減るなか、AO入試は二極化しています。難関校は優秀でトガった生徒を選別する一方で、中堅校や底辺校では定員を確保するための手段になっています。選抜方法も非常に工夫している大学と、いい加減な大学に二分されます」
なかには“願書を出せば合格する”と噂される私大もある。その一方、今回の東大は、「入試の意図が明確だった」と精神科医で受験アドバイザーの和田秀樹さんが評価する。
「たしかに日本のAO入試は学力テストがないケースも多く、基本的に“ユルい”面があります。でも今回の東大は合格者を少人数に絞り、本当に優秀な学生を確保したいという意図が見えました」
今回の試験に先立ち、東大は「視野の狭い受験勉強」に意を注ぐ人より、学校の授業の内外で幅広く学び、「広い視野」と「深い洞察力」を獲得しようとする人材を望むと表明。入試では書類審査と小論文、面接にセンター試験の点数を加味し、栄えある初合格者を決めた。
各学部学科が提出を求めた書類・資料には、〈開発したソフトウェアの概要資料、科学雑誌に掲載された論文など〉(理学部)、〈数学オリンピックなどの科学オリンピックで顕著な成績をあげたことを示すもの〉(経済学部)などの厳しい条件が課され、センター試験でも8割以上の得点が目安になるなど、総合的に難易度の高い入試になっていた。