ライフ

回復困難だった突発性難聴に画期的な聴覚再生治療法開始

 難聴には鼓膜など、音を伝える機能に問題がある伝音難聴と、内耳の音を神経信号に変換する蝸牛や聴神経に障害がある感音難聴がある。突発性難聴はある日突然、原因不明で聴力が落ちる感音難聴を指す。国内の年間患者数は、約3万5000人と推計されており、誰でも発症の可能性がある。標準的治療は、ステロイドの内服か注射による全身投与だが、3割以上の患者が十分に聴力が回復しない。

 京都大学医学部附属病院耳鼻咽喉科の中川隆之医師の話。

「突発性難聴の多くが内耳の蝸牛の障害ですが、蝸牛はとても小さい器官で、血液がわずかしか巡らず、服薬や注射では十分とはいえません。しかも、内耳にはバリアがあり、有効成分が到達しにくいのが問題でした。そこで蝸牛に、大量の薬剤を入れることで、聴力を回復させることができるのではと研究を開始しました。それがIGF-1を使った聴覚再生治療です」

 IGF-1(インスリン様細胞増殖因子1)は、成長ホルモンに刺激されて主に肝臓で分泌され、細胞や筋肉、神経などの発達を促すとされる物質だ。治療には保険収載されている「ソマゾン」という薬剤を使用している。

 治療は鼓膜を切り、中耳と内耳の境目にある正円窓(せいえんそう)という膜から蝸牛の上にIGF-1を含んだゼラチンハイドロゲルを留置する。動物実験では1回の留置で、3日程度薬剤が蝸牛に徐放されることが確認されており、時間を掛けてゆっくり効果が持続する。

 これまでに2回、臨床研究が行なわれている。1回目は発症後1か月未満で、ステロイド治療でも聴力が回復しなかった25人を対象に実施され、14人に聴力回復が見られた。

 その後、120人を対象に実施された。対象となる患者は1回目と同じで、60人ずつ2つのグループに分けた。片方はIGF-1を投与し、もう片方にはアメリカのFDAで治療が推奨されている、鼓膜から注射針を刺し、内耳にステロイド剤を4日間注入する方法で結果を比較した。

関連キーワード

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン