新聞や『あさイチ』(NHK)や『NEWS23』(日本テレビ)などのテレビ番組で近ごろ頻繁に取り上げている「スマホ老眼」。スマホの見過ぎによる若者の“老眼”が増えていると話題だ。
眼鏡光学出版の調査によると、老眼の症状を訴える若者は2010年の0.3%から、2014年には5.1%に増加。実際、遠近両用の累進レンズを使った老眼鏡は、若い人たちにもニーズが高まっている。パリミキ・メガネを展開する三城ホールディングスによると、若年者向け累進レンズの出荷枚数は2013年を基点とした比較で12.0%(2014年)→13.1%(2015年)と増加傾向。イワキメガネが20~40代を対象とした統計でも、14%(2014年)→21%(2015年)と年々伸びている。
本来は老化によって起こる老眼が、なぜ若い人にも起こるのだろうか。眼科臨床医で白内障手術の権威、東京・三井記念病院の赤星隆幸医師によれば、人間の目は、毛様筋という筋肉が、目のレンズ(水晶体)の厚みを調節してピントを合わせている。その毛様筋が加齢と共に衰え、ピントの調節力がなくなることで近くが見えにくくなるのが老眼。ところが、年齢とは関係なく、毛様筋の慢性的な緊張によって老眼と同じようにピント合わせができない状態になってしまう。今20~30代にも増えている若年性の老眼は、この「調節緊張」による「仮性近視」だという。
「眼球はカメラのような構造になっていて、遠くを見るときには目のレンズは薄くなり、近くの物を見るときにはレンズは厚くなって、柔軟にピントを合わせています。ところが近くを見続けることで、レンズを厚くし続けるために毛様筋は慢性的に緊張状態となります。そのため目は疲れ、遠くを見るときにもレンズは分厚いままになってしまい、遠くの焦点が合わなくなる『仮性近視』になってしまうのです」(赤星医師、以下「」内同)
遠くの焦点が合わない状態が長く続くことで、目が悪くなったと考えてメガネやコンタクトの度を強める人は多いが、これは間違いだと赤星医師は指摘する。
「度を上げることで遠くは見えるようになりますが、緊張状態の毛様筋をさらに緊張させ、近視状態をますます強めてしまいます。すると、今度は近くの焦点が合わなくなるというドツボにはまってしまうのです。この『過矯正』によって、頭痛や気持ち悪さ、吐き気が現れることも。逆に度数を下げることで楽になります」
対処法は、スマホを近すぎる距離で見ない。画面の大きなものを選ぶ。見る時間を区切って眼を休め、遠くをボーッと見ることで毛様筋の緊張を緩めたり、眼科で調節緊張の治療として処方される点眼薬が有効。
「毛様筋の緊張をほぐす点眼薬があります。これを夜寝る前に1滴点眼して休みます。メガネやコンタクトを新調する際にも、緊張状態で視力検査をすると、近視の度数が強く出てしまい過矯正の処方になるので、事前に緊張をほぐしておくことをお薦めします。数日間は寝不足をせず、目を充分に休めて目のレンズを薄く戻してから検査を受けてください」