ネットを主戦場にした「食メディア」が急増している。その背景はなにか。食文化に詳しい編集・ライターの松浦達也氏が解説する。
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この1年ほど、メディアの”食シフト”が加速している。とりわけ急増しているのが、自前のコンテンツを配した、ネットメディアの立ち上げだ。大手Webサービスから老舗の路面店までが、わずか数インチのスマホの画面をめぐって、ユーザーの時間を奪い合っている。
食メディアのなかでも、早期に自前コンテンツに手をつけたのは、大手レシピサイト「クックパッド」だ。2013年に「クックパッドニュース」を立ち上げ、以降更新頻度を加速させ、現在では一日20本近くのニュース記事を配信するように。さらに2015年には『暮しの手帖』元編集長の松浦弥太郎氏を迎え、「くらしのきほん」というライフスタイル提案コンテンツも発信している。
飲食店検索サービスの老舗「ぐるなび」も自前のサービスを次々に展開中。ネット界のクリエイターを中心に据えた「みんなのごはん」では飲食店情報にかぎらず、小ネタも含めたグルメ記事を配信している。昨年9月には「dressing」という飲食店を切り口としたライフスタイルメディアを立ち上げた。こちらの執筆陣は、食専門誌などで執筆する重鎮からアーティストまで多士済済である。
異色なのが、三越伊勢丹ホールディングス(IMHD)が立ち上げた「FOODIE」である。実際の運営にはインフォバーンも携わっているが、あくまでも運営主体はIMHD。「お客さまの購買意欲を喚起する双方向の情報発信機能と、グループ内外のコンテンツを幅広く扱う物販機能を融合させる」と意気軒昂だ。
昨年、博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が発表した「メディア定点調査・2015」からは、この10年でのメディア接触時間における「携帯・スマホ」の一人勝ちの様相が伺える。2014年から2015年にかけての接触時間の推移を見ると「テレビ」「ラジオ」「新聞」「雑誌」「パソコン」はいずれも微減。前年比で接触時間が伸びたのは「携帯・スマホ」「タブレット」のみ。両者の合計は、メディア総接触時間の1/4を超えたという。全体のスケールとしてはもはや完全なマスメディア。誰もが「Web」に注力するのは無理からぬことなのだ。