定額制動画配信(SVOD)のNetflixで米人気ドラマ『フルハウス』の続編『フラーハウス』全世界配信が2月26日から始まった。同作は1990年代に繰り返しNHKで放送され楽しんだファンも多いドラマの続編のためか、配信開始から日本語吹き替え版が用意されている。このことからもNetflixが日本市場開拓に期待していることがうかがえるが、同社に限らず、2016年はSVOD事業者による日本向けサービスが充実する年となりそうだ。
現在、日本でサービス提供されている主なSVODはdTV、Hulu、Netflix、Amazonプライムビデオがあげられる。ここにコンテンツごとに課金のシステムだったGYAO! に新規プランとして追加されたプレミアムGYAO! も加わった。SVOD戦国時代といった様相だが、この時期だからこそ「お試しでもSVODの便利さと面白さを体感するチャンスです」と、『ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える』の著者でジャーナリストの西田宗千佳さんはサービス体験をすすめる。
「いつでも自分の好きなタイミングで、テレビやPCはもちろん、スマホやタブレットを使えば場所も選ばず見られる便利さは、一度味わうと手放しがたいものです。日本ではテレビは無料で見るものと思われていること、世界でもっとも録画機器が普及していることからSVODは浸透しない、テレビ視聴習慣がない若い世代でもお金が発生すると難しいと言われてきました。しかし、アニメ『妖怪ウォッチ』からの視聴収入の多さに、テレビ局の認識も変わっていったのです」
もともと積極的にネット配信されていたアニメコンテンツだが、それは困難を乗り越えてでもやってくるファン向けサービスだった。しかし『妖怪ウォッチ』は未就学児から小学生が主な視聴者で、しかも繰り返し再生する。より人数が多い一般層がサービス利用を始め、利益になると判明してから、日本のテレビ局はコンテンツを積極的にSVODや見逃し配信サービスで提供するようになった。
「SVODはテレビ局の敵だと思われていましたが、流せば流すほど収益をもたらす可能性があるとわかったのです。そして、視聴者は手軽に見られる手段だと再発見しました。そうやって認識が変わるタイミングでNetflixとAmazonプライムというアメリカの2大サービスが日本進出し、日本市場の競争は激化しています。差別化を図るため各SVODはオリジナルコンテンツ制作に積極的です。今年は日本向けの意欲作が増えるでしょうね」(前出・西田さん)
又吉直樹の『火花』原作のドラマや、アニメ制作会社プロダクション I.Gと共同で『パーフェクト・ボーンズ』を制作し世界190か国配信などにぎやかな話題が続くNetflixに注目が集まりがちだが、他のSVODでもオリジナルコンテンツは増えている。dTVでは『進撃の巨人』など映画のスピンオフ作品が、Huluでも尾野真千子主演の『フジコ/Fujiko』など地上波放送は難しいような、大胆な表現に踏み込んだ作品が制作されている。
アメリカでテレビのアカデミー賞と呼ばれるエミー賞やゴールデングローブ賞のドラマ部門では、いまやSVOD事業者制作のドラマがノミネートと受賞の常連だ。今年はNetflix制作の長編が映画館でも公開されたことから、ゴールデングローブ賞の長編映画部門でもノミネートされた。新興IT事業者から次々と評判が高いコンテンツが生み出されるのは、なぜなのか。