GDPのマイナス成長、実体経済に反映されないアベノミクス景気、4年連続で下がった実質賃金、金融業界を混乱させるマイナス金利……など日本経済を「悲観論」が覆っている。しかし、そうした指標を認めながらも著名投資銀行家“ぐっちーさん”こと山口正洋氏は「日本経済こそ世界最強」を唱え続ける。その論拠とは? 稀代の金融のスペシャリストが語った。
「アメリカのシアトルで人気回転寿司チェーンを経営する私の友人、ジェームズの話です。レーンを回る寿司の鮮度管理に頭を悩ませていた彼は、世界的な企業であるマイクロソフトに相談しました。
同社には、“ICチップをお皿に埋め込んでセンサーでチェックすれば簡単に管理できる”といわれました。ところが、実際にいざこれを製造しようとするとアメリカにはそんな技術力を持つ会社がない。そこで日本の中小企業に頼んだところ、世界初の回転寿司センサーシステムを作り上げたそうです。
アイデアはアメリカでも、それを具現化する製造業の力は日本の強みそのもの。国内では“日本経済は長く停滞し、少子高齢化で衰退している”と広く語られていますが、外国人はそう思っていません。むしろ日本こそ次の時代を牽引する可能性が高い国だと見ているのです」(山口氏)
モルガン・スタンレーをはじめ欧米の金融機関を経て、投資銀行家として独立後はM&Aから民事再生、地方振興まで幅広く手がけてきた。近著『上位1%のエリートしか知らない? ニッポン経済 世界最強論!』(東邦出版刊)は10万部を突破するベストセラーとなっている。
山口氏は、「今の日本経済は世界最強であり、すべての悲観論はまやかしである」と断言する。
たとえば、昨年末に内閣府が発表した2014年の国民1人当たり名目GDP(国内総生産)。3万6200ドルと前年比6%減で、OECD(経済協力開発機構)加盟の34か国中20位となり、過去最低の順位になった。だが、山口氏は「ドルベースの数字は円安になれば下がるのは当然」と看破する。
「そもそもGDPに含まれる経済生産を生み出す主体は人であり、その能力の高さを示す『人的資本』、これまで構築されてきた効率的なインフラや安全な環境といった『生産資本』など、GDPに現われない資本力で日本は世界一なんです」