ゾンビ企業は国家財政を悪化させるばかりか新興産業への資金投入を妨げ、経済を停滞させる。経済危機の昨今、韓国政府はようやくゾンビ企業を整理淘汰する方針を打ち出したが、再雇用の受け皿は用意していない。8万社の従業員が行き場をなくせば、未曾有の大混乱となるだろう。
不況の韓国ではすでに空前のクビ切り旋風が吹き荒れている。今年1月1日から定年制が55歳から60歳に延長され、業績悪化にあえぐ大企業や金融業界が社員に「名誉退職」を勧めている。名誉退職とは名ばかりで実態は「強制退職」に他ならない。サムスンが6000人、銀行が2800人の整理を強行し、入社間もない20代の社員がリストラされるケースまである。
2015年3月に大卒の失業者が50万人を超え、硬直化した格差社会で若い世代は未来に希望を持てない。出生率は日本より低く、生産年齢人口(15歳~64歳)が減り続け、加速する高齢化が国の財政を圧迫する。生産性を上げようにも基盤技術がない。
それでも韓国は「中国がいるから大丈夫」と楽観していたが、輸出先の4分の1を占める中国経済が減速し、米国の利上げも加わってお先真っ暗だ。日本は1500兆円もの家計貯蓄が内需を支えるが、収入をすべて使いきる「浪費体質」が身についた韓国の家計債務は15年末の合計で123兆円に達し、爆発寸前の「時限爆弾」となっている。
アベノミクスで日本経済が息を吹き返す一方、莫大な生活不安を抱える韓国の国民は自らを変える勇気を持たず、欝憤晴らしの「日本叩き」に奔走する。あるオランダ人学者は韓国人の行動原理を「8割が感性、2割が理性」と鋭く評したが、隣国では今年も経済的な不安を背景にした「反日」が続くだろう。
※SAPIO2016年3月号