誰にでも訪れるのが家族の死。しかし、悲しみに打ちひしがれる暇もないままに、様々な手続きに追われるという残酷な現実もあるのだ。そこで、もしも家族が亡くなったら実際にどんなことをすればいいのか、夫に先立たれた妻のケースを例に紹介する。
夫の死後、喪主として葬儀を執り行い、夫の身の回りの手続きを整理し、これからの生活設計を立て直す…。妻がやるべき仕事はあまりに多い。申請に締め切りがあるものもあり、気持ちの整理もつかないうちに作業を開始しなくてはならない。途方に暮れて、払わなくていいお金を払うはめになったり、もらえるはずのお金を取りこぼしたりすることがないよう、一刻も早く落ち着きを取り戻すことが先決だ。
【払うお金】
■葬儀費用
夫が死亡すると、まず必要になるのが葬儀費用に使う現金だ。ここで安易に夫の口座から引き出すのはNGとファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんは言う。
「夫の預金は、“相続財産”となり、原則として銀行が凍結します。遺産分割協議が終わるまでは、配偶者でも下ろしてはいけないお金になります。仮に引き出せても、相続人が複数いる場合はもめる原因になりやすいので注意が必要です」
必要な現金は、自分の口座か、足りなければ親戚などに借りることになる。葬儀にかかる平均額はおよそ189万円(日本消費者協会調べ)。すでに退職していて、高齢ならば家族葬や密葬で安くすませることもできるが、現役で会社に勤めている場合は仕事関係者が多く弔問に訪れるため会場も大きいところを用意しなくてはならない。
「仕出しや飲み物の注文も増えるので、費用がかかります」(畠中さん)
なお、費用は当日仕出し業者に払うか、後日、葬儀社に払う。それとは別に、葬儀当日には寺院へのお布施などの用意も必要だ。
エンディングデザインコンサルタントの柴田典子さんは、「葬儀社を安易に決めてはいけない」と話す。
「いちばんいけないのが、病院で紹介された葬儀社でそのまま決めてしまうパターンです。みなさん亡くなると、『すぐ明日、通夜をしなければいけない』と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。優先すべきは自分で納得して決めることです。病院で紹介された葬儀社でももちろんいいですし、迷うようであればひとまずご遺体を自宅へ安置してもらうまでにしておいて、一度お引き取りいただき、それから他の葬儀社を探すこともできます」
複数の葬儀社から見積もりをとるなどすれば、その良し悪しも見えてくるだろう。