元総理の元妻であり、今をときめく人気俳優と将来の総理候補の母にして、不動産会社で33年のキャリアを積んできたシングルマザー。それほどまでに劇的な半生を歩んできた彼女だが、頑なに公の場では口を閉ざしてきた。だが、離婚後33年を経て、初めて講演や雑誌インタビューで息子たちのことや自身の人生について語り始めた──。
その女性が登壇すると、堅苦しい雰囲気が漂っていた会場がパッと華やいだ。聴衆の1人が振り返る。
「彼女にとって初めての講演だったなんて信じられません。人と人とのご縁や絆が、仕事でも人生でも、いかに大切かをお話しされていましたが、その話のテンポのよさと巧みさは女・綾小路きみまろとでもいったらいいのでしょうか、どんどん引き込まれていくんです。聴衆との軽妙なやり取りやジョークでドッと笑い声が上がることもあれば、仕事にかける彼女の情熱に会場がしんと静まり返ることも。しかも、言葉の端々から伝わる彼女の半生はあまりに衝撃的で…」
昨年11月半ば、東京・港区の明治記念館。不動産業界団体「日本賃貸住宅管理協会」が開催したフォーラムの「レディース委員会全国パーティ」特別講演には、そのフォーラムで最多の約400人の聴衆がホールを埋め尽くした。最前列には不動産大手グループの重役がズラリと顔を並べる。
講演の題目は「不動産は私を裏切らない(黒革の手帖 不動産編)」。人の心をつかむ名スピーチに会場からは「さすがに“あの人”の母」との声が漏れた。講演前、事務局は聴衆にこう彼女を紹介した。
「本日のスピーカーは小泉孝太郎さん(37才)、小泉進次郎さん(34才)のお母さんです──」
34年前、小泉純一郎元総理(74才)と離婚以来、宮本佳代子さん(60才)が表舞台に立つことは一切なかった。2001年、元夫が総理になり、孝太郎の俳優デビューが話題になったときも、衆院議員として進次郞氏が脚光をあびたときも、口を閉ざし続けてきた。
「鉄の意志だったと思います。小泉家を出るとき、家族について二度と話さないと決めた。政財界、芸能界でも彼女は知る人ぞ知る存在でした。でも、どんな大物にどう言われてもその決意が揺らぐことはなかった。ただ、最近その心境に変化があったようです」(政界関係者)
3月10日発売の健康情報誌『いきいき』4月号で、彼女は初めてその半生、そして3人の息子たちへの思いを語った。予告には「孝太郎、進次郞、佳長、息子3人の母 宮本佳代子さん~妊娠6か月で離婚後、シングルマザーとして働き続けて33年。今60歳、人生の第二ステージへ~」とあり、特集はカラー6ページにわたる。
ようやくこの話ができるようになるまで――その道のりは平坦ではなかった。