映画『エヴェレスト 神々の山嶺(いただき)』(3月12日公開)で、世界最高峰の頂を目指す登山家・羽生を演じた阿部寛(51才)。極限の撮影に臨んだ彼にインタビューを行った──。
東京・六本木にある映画会社の1フロアは、撮影準備を行うカメラマン、映画会社スタッフでごった返している。試写室内で撮影ができることになり、準備万端待っていた私たちの前に、うっすら髭を生やした阿部寛が、静かに現れた。「ここでいいですか?」。挨拶の後、そう言って椅子に座った阿部寛は、穏やかに微笑んでいる。
──早速ですが、もともと山はお好きだったんですか?
「いえいえ。まったく経験もないから、体調管理も万全を期したし、高地に慣れる準備をしました」
──例えばどんなことを?
「ロープを使って岩を登ったり、ボルダリングをしたり、低酸素室へ入って、低酸素状態に慣れる訓練とか、3か月くらいかけてしたんです。せっかくエヴェレストに行くのに、途中で迷惑をかけたり、山を下りるようなことがあれば、終わりですからね」
──以前から登山家はなぜ大変な思いをしてまで山に登るのか、と思っていたんですが、映画を拝見して、俳優さんも、なぜこんなに過酷な思いまでして撮るのかと思いました。
「ハハハ。でも、お話をいただいた時、ぼくはふたつ返事でお引き受けしたんです」
──えっ、まさかの即答ですか!
「はい。だって俳優人生でそうはない経験になると思ったんですよ。エヴェレストが舞台だなんて、最高の場所じゃないですか!」
──それはそうですが…。現地はいかがでしたか?
「実際にネパールに行ってエヴェレストを見た時、その広さ、奥行き感に言葉を失いました。それがまた映画にしっかり映っていたので、ああ、行ったのは正しかったのだ、と思いましたね」
──かなり過酷な状況だったのではと推察しますが…。