◆おみくじや賽銭についても英語で分かりやすく説明
そして一行は、もっともにぎわう仲見世通りを通り抜け、今日の目玉となる浅草寺へ。「What’s this!?」
おみくじの前で立ち止まるゲスト。大石さんは彼らに、「People are shaking a fortune box」と、おみくじの説明をして、実際に引いてもらう。シャカシャカシャカ。まずは若い女性が箱を振る。穴から出てきた木の棒には「1」の数字。1番の引き出しを開け、紙を取り出すと──。
「Oh! This is the best one! It’s Great fortune! Congratulations!」(わお、これは大吉だ。おめでとうございます!)と、大石さんが拍手で祝福。
「I made it!! I made it!! So do many people get this?」(やったわ! うれしい! 大吉は結構な確率で当たるの?)
そう尋ねる彼女に、大石さんは浅草寺のおみくじの大吉、吉、小吉、半吉、凶の割合と、その割合がずっと変わらないこと、そして大吉がいかに幸運かを伝える。
そしていよいよ本殿へ。ここで気になるのが宗教の問題だ。海外からの観光客に仏教信者は少ない。しかしクリスチャンであろうと、少しでも浅草寺を楽しんでもらうため、大石さんはここでも工夫を欠かさない。どんな国のどんな宗教でも心に迷いがあれば助けてくれる神様だと説明したうえで、こう加えた。
「As for offerings, the amount of money doesn’t matter at all, you know, God is never ever interested in money, right? Only the people who work for this place are. They must think about it」(お賽銭に関しても神様はお金をもらっても使えないから気持ちだけでいいんですよ。お賽銭をもらって喜ぶのは寺で働いているお坊さんかもしれないですね)
この言葉に安心した表情を見せたゲストたち。最後まで笑顔の絶えない2時間だった。大石さんはこう語る。
「どう伝えれば日本のことを好きになってもらえるか、気持ちいい時間を過ごしてもらえるか、そんなことを考えながら話しています。もちろん、わからない単語などもありますが、そこは聞き直せばいい。堅苦しく考える必要なんてありませんから。大変そうですか? いえいえ、本当にただただ楽しいです」
大石さんは6年前に実父を肺がんで亡くしてから、それまで勤めていた外資系アパレルの仕事を辞め、一人娘として老齢の母親の介護をしている。そのため緊急時には休めるガイドの活動を、今は週に3回ほどしている。
「今後は、来る2020年の東京五輪パラリンピックで、車いす移動をする外国人客に英語で手助けをしたい」
※女性セブン2016年3月17日号