いわゆるホームドラマ、は時代の合わせ鏡だ。いつの時代も「家族」は変わらぬ大きなテーマ、名作も数多く生まれてきた。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が2つの作品を挙げた。
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山口智子がインタビューで「子供を産んで育てる人生を望まない」が「世界で一番幸せだと思って生きています」(『FRaU』3月号)と語り、その潔さが素晴らしい、カッコイイ、と大反響を巻き起こした。
大量の情報が溢れかえっている時代、しかし家族の多様な「カタチ」についてはまだまだ語り尽くされていない--反響はその証しのようにも思える。今クールのドラマも追い込みに入っている。そこで「家族」をテーマに掲げた「ホームドラマ」二本に注目してみたい。
● 『家族ノカタチ』(TBS系日曜午後9時)
こだわりの美学を持つ分、他人が許容できない大介(香取慎吾)と、やり手OLでバツイチ女の葉菜子(上野樹里)。高層マンションの上下に棲む二人が主人公。
大介はきっちりとした性格の持ち主で「週6でジム通いのほか、話題の書籍や映画などのチェックを怠らず、自分磨きが大好きな男。一人暮らしに不便さを感じたこともなく不満もない。むしろ、自分の生活圏内に他人を迎え入れることをリスクと考え、必要以上に他人との距離を縮めようとはサラサラ思わない」(TBS番組公式ホームページ)。
他人に対するイライラ感、不機嫌さがリアル。けれども、冷血漢ではないのがポイント。どこかにほんのりとした温かさ、傷つきやすさが同居している大介。そんな「暖かさ」「繊細さ」が、セリフではなくて役者・香取慎吾からじわっとにじみ出てくる点が秀逸だ。
冷たいのではなく、不器用。他人に関心がないのではなく、自分が傷つきたくない。だから、他人を受け入れない方が楽と決め込む──ほら、そこかしこにいるでしょう、このタイプ。
香取は表情を1ミリも変えない。ぐっと我慢して不動のまま。奥歯を噛みしめる。言いたいことをこらえている。どんな言葉を使えばいいのか、迷っている。相手を受け入れてはいけないと緊張している。震える頬の肉。ひしひしと伝わってくる感情。その微妙なあたりを実に上手に演じている。
相手役の上野樹里も負けていない。仕事はデキるがどこか辛辣で協調性に欠け、それを自覚しているからこそ一人で生きていく覚悟のバツイチOLを、いきいきとリアルに演じ切っている。
ドラマの主人公二人は今の社会を映し出す鏡のよう。他人を許容できない男と女。そこに、「家族」というおせっかいな人々が割り込んできた時初めて、二人はつながりを持つことになる、という物語。
そもそも二人にとって「家族」は想定外だった。しかしその「家族」が接着剤となって、二人が接近していくというプロセスを、一見ライトなタッチで鮮やかに描き出すこのドラマ。演出も脚本も細部まで細かく丁寧に作り込まれた「恋愛ホームドラマ」として見事。