育児休暇取得を宣言していた宮崎謙介元衆議院議員が、妻・金子恵美衆議院議員の出産直前に不倫していた騒動“ゲス不倫”により、男性の育休取得のイメージがすっかりダウンしたともいわれている。
そもそも育休とは、育児・介護休業法で定められた休業の制度。いまだに誤解している人が多いが、そこには男女の性差がない。男女どちらでも最大1年半が保証されていて、休業から半年間は休業開始前の手取りの約8割が給付される。ダイバーシティ・コンサルタントの渥美由喜さんは言う。
「一昨年から制度が改正されて、育休中に在宅勤務をしても一定金額までは給与とともに給付金が併給されることになりました。手取りベースで最大93%まで補填できます。制度自体は、世界で最も進んでいる北欧の次に整っています。世界的に見てもすごい制度を日本は持っているんです」
つまり、巷でよく言われる、男が育休を取ると家計が回らないという主張は、あまり的を射ているとは思えない。
それにもかかわらず、2014年度の男性育休取得率はわずか2.3%にしかすぎない。女性の取得率86.6%と比べてずいぶん低い。
なぜか――実際に育休を取得した男性に、育休を取るまでの道のりを聞いてみると、なるほど高くて巨大な壁が見えてきた。
◆「仕事から逃げるために育休を選んだだろ」
メーカー勤務の大野聡さん(33才、仮名)は、1才の長男のために1年間の育休を取得している。先に言っておくが、大野さんはバリバリの企業戦士だった。
「2才上の長女がいるんですが、そのときは妻が育ててくれたんです。今度は、自分が子育てにかかわりたいと思っていたし、妻も賛成してくれたので、最初から育休を取ると決めていました。出産から半年後までは妻が、そこからは私が取っています。現在、妻は復職して働いているので、私が主夫をしています」