訪日外国人客の急増で「ホテル不足」が叫ばれる中、国内出張族の強い味方となっているのが、手頃な料金が売りのビジネスホテル。だが、店舗数・客室数の多い全国チェーンといえども、いまや宿泊料金や設備のグレードも千差万別で、一括りにはできない。
ホテル評論家の瀧澤信秋氏が、さまざまな角度から有名ビジネスホテルチェーンを評価する。
* * *
全国各地で見かけるビジネスホテルチェーン。最大手といわれる東横イン(255店舗)やルートイン(261店舗)、それに準ずるアパホテル(303店舗)、スーパーホテル(112店舗)といったチェーンも全国へ展開するホテルとして知られる。
ビジネスホテルは「宿泊特化型ホテル」ともいわれる。本来“ホテル”とは、客室に加えレストランやバンケットルーム、スパやショッピングアーケードといった“パブリックスペース”のある「シティホテル」と呼ばれる施設を指すが、ビジネスホテルは「宿泊」に「特化」したホテル、すなわち(主にシングルルームの)客室で構成されたホテルが「ビジネスホテル」ということになる。海外では「イン」とも呼ばれる。
ビジネスホテルチェーンの特徴は“機能性”と“利便性”だ。豪華で行き届いた客室や質の高いホスピタリティではないが、必要な設備やサービスを利用者目線でよく吟味している。
また、ルートインで見られるようなロードサイド店舗を除けば、基本的には駅から近い立地。全国どこへ行っても駅前には見慣れたホテルの看板――という光景を目にすることも多いだろう。
無料朝食も一般的になった。ブッフェ形式で和・洋充実したメニューが揃えられていてお得感が高い。無料といっても宿泊料金に転嫁されているわけだが、利用者の満足度を追求する各チェーンの取り組みには驚愕だ。
手頃な料金も魅力であったが、昨今のホテル不足問題もありチェーン間で料金の変動幅に差が見られる。
変動幅が大きいチェーンの筆頭はアパホテルだ。特に都市部の施設では顕著。閑散日に5000円の客室が繁忙日には3万円という例もあり、料金で言えばもはやビジネスホテルのイメージとは乖離する。一方、変動幅が小さいのが東横インやルートインといったチェーン。
アパホテルは、客室に関しても他チェーンと比較して特徴的だ。都心で新たに建設された店舗は、客室面積こそ限定的ではあるものの、マットレスや浴室、その他設えの質感は高く、利用者の納得性を鑑みた“アパクオリティ”が貫かれている。リッチモンドホテルといった付加価値型のハイエンドヒジネスホテルをも彷彿とさせる。
他方、地方店舗では旧態型のビジネスホテルをリブランド、リニューアルしたケースも多く、空調や排水、調度品など、都心のアパクォリティを知っている利用者からは「これが同じアパホテル!?」という声も聞かれる。