プーチンや金正恩の暴走によって「2016年のいま、世界は戦争の危機に陥っている」とジャーナリストの落合信彦氏は指摘する。だが、それを抑制する存在であるはずのアメリカのリーダーシップは欠如している。落合氏は今まさに山場を迎えているアメリカ大統領選挙の候補者たちにも、「真のリーダー」はまったく見当たらないと語る。
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オバマのリーダーシップのなさが金正恩の暴走を許していることはたびたび指摘しているが、オバマ後のアメリカを担う大統領候補の顔ぶれを見ると、これまた絶望的な気分になる。
候補者の公開討論会を見ていると、単なる誹謗中傷の応酬だ。低レベルにもほどがある。
その代表格は、共和党の“暴言王”ドナルド・トランプだ。2月の討論会では、ライバルの上院議員テッド・クルーズに対し、「最大のうそつき」呼ばわり。元フロリダ州知事のジェブ・ブッシュには、兄のジョージ・ブッシュが始めたイラク戦争を「とんでもない間違いだ」と罵った。
言われたジェブ・ブッシュも同レベルで、「トランプ氏がテレビ番組を制作している間、私の兄は安全を守るための仕組みを作った」と言い返した。するとトランプは「ワールド・トレード・センタービルが崩れ落ちたのは、お前の兄の任期中だ。それを忘れるな!」と反撃した。
司会者が場を落ち着かせようとしても、候補者たちはそれを遮ってお互いを非難するばかりだった。金正恩が核実験やミサイル発射といった「悪ガキの火遊び」をしている間、アメリカでは「ガキのケンカ」をしているだけなのだ(サウスカロライナの予備選が終わった時、ジェブ・ブッシュは選挙戦から降りてしまった)。
トランプが演説会を開くと多くの共和党支持者が集まる。が、子連れの女性たちは、トランプの言葉が汚すぎて子供に聞かせたくないから、帰ってしまうという。
民主党も低レベルだ。ヒラリー・クリントンは、上院議員のバーニー・サンダースをこう批判した。
「サンダース氏は、オバマ大統領のことを『弱腰』『期待外れ』といったが、まるで共和党のような批判だ! それでもオバマ大統領の職務を継ごうという人の発言か」
対するサンダースは、「(2008年の大統領選の際、クリントンと違い)私は、オバマ氏を敵として大統領選に出たことはない」と反論した。