予備群を含めれば患者の数は2000万人。「糖尿病」は日本人の国民病ともいえる。ところが、同じ病名なのに60歳を境に、合併症の危険や治療の常識が変わるという──60歳という人生の節目を機に、体のケアに対する考え方をどのように変えていけばいいのだろうか。60歳になってから糖尿病と診断されたA氏がガックリと肩を落とす。
「還暦を迎えてようやく仕事も一段落したのにショックです……。元々、血圧が高めで最近は体力的に“老い”を実感していましたが、ますます先行きが不安になりました」
A氏のような“還暦糖尿病”は決して例外的なケースではない。厚生労働省の「2014年国民健康・栄養調査」によると、60代の糖尿病有病率(疾病が強く疑われる人の割合)は50代のおよそ2倍となる20.1%に達する。
なぜ、60歳を超えると糖尿病患者が増えるのか。芝浦スリーワンクリニックの板倉広重名誉院長が解説する。
「60歳を過ぎると老化による身体機能の衰えや、身体活動量の減少など生活習慣の変化などにより、糖尿病にかかりやすくなります。若い世代より格段に発症リスクが増加します」
単に発症しやすくなるだけではない。60歳以上の糖尿病は「よりリスクが大きくなる」と警告するのは、銀座泰江内科クリニックの泰江慎太郎院長だ。
「高齢者の糖尿病は重篤な合併症を起こしやすく、最悪のケースでは死に至ることもあります。若年層と高齢者の糖尿病対策は大きく異なるので、細やかな世代別のリスク管理が求められます」
60歳を境にリスクや治療法が大きく変わるという糖尿病。専門家の解説とともに、その違いを見ていこう。