まるですべての政策がそれに向けた布石に見えてしまうほど、いまや安倍官邸は「衆参同日ダブル選」への野心を隠さない。与野党とも、その大きなうねりに乗り遅れてはならぬと、臨戦態勢にひた走る。
だが想像してみてほしい。中曽根政権以来30年も封印されてきたダブル選がいま行なわれたら、いったい何が起きるのか。そこで有権者を待ち受けているのは、投票の判断基準を失わせる未曾有の大混乱である。
改憲勢力による衆参3分の2に向けて動き出した7月の衆参ダブル選挙の流れは、もう止められない。その時、歴史はどう動くのか。日本の選挙制度を崩壊させるダブル選の混乱と議席予測をシミュレーションした。
憲政史上3回目の衆参ダブル選挙の投票日となる7月10日、列島にパニックが広がる。投票所に足を運んだ有権者たちは、まず並べられた5つの投票箱を目にして面食らい、渡される5枚の投票用紙に戸惑うはずだ。
「衆院選小選挙区」「衆院選比例代表」「参院選選挙区」「参院選比例代表」に加えて、最高裁判所判事の国民審査まで1度に5回の投票を行なわなければならないからだ。
前回の中曽根康弘政権下のダブル選挙(1986年)を鮮明に覚えている人は少ないかもしれないが、当時は、衆院は中選挙区で比例代表制度がなかったため、ダブルでも「衆院は○○党のAさん、参院の選挙区は××党のBさん、参院比例は△△党」という具合に投票し、国民審査を含めて投票箱は4つでも混乱は小さかった。
しかし、今回のダブル選挙は段違いに分かりにくい。ややこしいのは衆参の比例代表選挙で投票用紙の記入方法が違うことである。参院の比例代表は「政党名」でも「候補者名」でも良いが、衆院の比例代表の投票用紙には「政党名」を記入しなければならない。
自民党と選挙協力を組む公明党支持者の投票パターンを想定してみよう。