3月31日でスタジオとしての営業を休止することが明らかになったスタジオアルタ。1980年4月にスタジオとして稼働が始まり、『笑っていいとも!』などバラエティーの公開生放送のスタジオとして数多くの歴史を刻んできたが、このほど36年の歴史に幕を閉じることになった。このニュース、単なる一スタジオの営業休止ととらえられているが、「テレビの危機がある」と指摘するのはテレビ解説者の木村隆志氏だ。スタジオアルタ閉鎖から見えてきたテレビ界の現状と課題とは? 木村氏が解説する。
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『笑っていいとも!』が終了して早2年、やはり「スタジオアルタの休業」というニュースには隔世の感があります。休業に至った理由は、「施設の老朽化」とされていますが、実質的にはテレビ業界を取り巻く変化によるところが大きいでしょう。
真っ先に挙げられるのは、テレビ番組の制作費削減による影響。各局とも自前のスタジオで撮影を行うことで、設備費、警備費、観覧者対応スタッフの人件費などが削減できます。
次に考えられるのは、公開生放送の番組が減ったこと。かつてスタジオアルタは、「公開生放送の聖地」と言われ、関東のみならず全国の人々が憧れを抱いていましたが、現在は公開生放送の番組自体がほとんどないのです。
かつて公開生放送の番組は、熱心なファンが集まって独特のムードを作り、爆発的な盛り上がりを見せる「テレビ番組の華」でした。しかし、最近はかつての『8時ダョ!全員集合』(TBS系)、『夕やけニャンニャン』(フジテレビ系)、『笑っていいとも!』のような「この番組が本当に好き」「ぜひ生で見たい」という熱心なファンのいる番組が少なくなっています。
生放送の番組自体は増えているものの、報道番組や生活情報番組ばかりで、「何が見られるんだろう」とワクワクさせるタイプのものがありません。『笑っていいとも!』終了後、スタジオアルタをレギュラー使用できる公開生放送の番組がなかったことが、それを証明しています。
たとえば、『バイキング』(フジテレビ系)は「生激論」企画などで攻めの姿勢を見せていますが、熱心なファンを入れて華々しくやるような内容ではなく、『ヒルナンデス』に至っては生放送なのにVTRがほとんど。コンプライアンス、BPO、ネット批判を気にするあまり、制作側は無難な企画に走り、出演者も無難なコメントに留めがちなため、「何が起きるか分からない」「ドキドキハラハラする」生放送の醍醐味があまりないのです。
思えば、スタジオアルタの人気に火がついたのは、『笑っていいとも!』の前に放送されていた『笑ってる場合ですよ!』でした。漫才ブームを背景に、ツービート、B&B、紳助・竜介などの人気者がそろい、山田邦子さんやダウンタウンを輩出した『お笑い君こそスターだ!』のようなコンテスト企画や、『勝ち抜きブス合戦』のような驚愕の素人参加企画など、各コーナーが生放送らしいハラハラドキドキであふれていました。『笑っていいとも!グランドフィナーレ』があれほど支持されたのは、そのような生放送らしいハラハラドキドキが詰まっていたからです。