では、住むために買うとすればどっちを選ぶべきなのか。それこそ「価値観の問題」だ。分かりやすく対比させると、以下のようになる。
●コスト面
・購入価格/都心なら面積割合でミニ戸建てのほうが安い。
・日常コスト/マンションは管理費がかかるが、戸建ては無料。戸建ての場合は、駐車場が付いていれば使用料もかからない。固定資産税・都市計画税にはあまり差がない。
・維持費用/マンションは月々修繕積立金を徴収される。80平方メートルなら1.6万円が目安。30年で総額576万円。戸建ての場合、30年間にかかる補修工事費の総額は100万円程度が目安。
●災害リスク
・地震/マンションは地震に強いと言われている。大地震でもマンション内で死亡する確率は微小。戸建ては新築なら倒壊の可能性は薄い。ただし、場所によって液状化で傾斜する可能性がある。また火災に巻き込まれることも考えられる。
・水害/マンションは1階住戸とエントランス等が浸水する可能性あり。戸建ては場所によって床上浸水を覚悟すべき。
●セキュリティ
オートロックなどに守られるマンションの方が安心。ただし、戸建てもセキュリティシステムの導入が可能。ただし、別途費用が発生。
●管理
マンションは管理組合が行うが、理事や理事長を務める義務が発生。戸建ては基本自主管理。ご近所づきあいが多少発生。
●居住性
基本的にフラットであるマンションのほうが優れている。戸建ては階段の上り下りがあり、高齢化すると住みにくい。マンションはエアコンを効かせれば季節を通して快適。戸建てはエアコンの効率が悪いので、光熱費が高くなる。
ざっとあげると、以上のようなところが大きく違う。この他にも、地味ながら日常生活の利便性で大きく違うのはゴミ捨て。マンションは「24時間ゴミ出しOK」がほとんど。戸建ては近くの集積所に決まった曜日の決まった時間までに自分で運ぶ。これがわりあい面倒で、日常の大きな負担になる。
分かりやすく言うと、マンションのほうが日常のコストはかかるが便利で快適。安全・安心で、ゴミ捨て等の負担が少ない。また、都心であればミニ戸建てよりも眺望に優れている場合が多い。
ただし、何年かに一度回ってくる理事が少し面倒。理事会の複雑な人間関係に巻き込まれる可能性もある。また、マンション内に「会いたくない人間」が出来てしまうと、心の負担になる。
そして、問題は数十年後――。建物の老朽化に対して、マンションを購入して住んでいる場合、一人では何も決められない。建て替えも、補修工事も、すべて区分所有法に定められた規定によって、管理組合の議決が求められる。建て替えなら全体の5分の4の賛成が必要。だから、簡単には決まらない。一方、戸建ては所有者の判断で建て替えも補修も可能。
購入価格が同じ場合、その後のコストは戸建てよりもマンションが圧倒的に高くなる。したがって、日常コストは安上がりだけど多少不便、でも管理の面倒がない戸建てを選ぶか、安くはない日常コストと引き換えに安全・安心で快適なマンションを選んで管理のリスクを背負うかどうか、という「価値観の違い」に収斂していく。
「マンションVS戸建て」の問題に決まった結論はない。答えは、これから住宅を買う人の心の中にある。