ビジネス

マンションVSミニ戸建て いま買うならどちらか

ミニ戸建てへの関心が高まっている(ABC/PIXTA)

 マイナス金利導入から2か月弱――。史上最低の住宅ローン金利により、マイホーム購入を窺っている人も多いだろう。そこで、まず出てくる大きな選択肢が「マンションにするか、一戸建てにするか」だ。

 一戸建てと聞くと「高嶺の花」のイメージが強いが、近年、都心の建売住宅でもよく見られる20坪程度以下の“ミニ戸建て”であれば、近隣の新築マンションと同等か、それ以下の金額で購入できるケースもある。

『新築マンションは買ってはいけない!!』の著者で住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、〈マンションorミニ戸建て〉の賢い選び方を解説する。

 * * *
 住宅案内誌で年に数回は特集として取り上げられているのが「マンションVS戸建て」というテーマ。これは永遠に結論が出ない神学論争のようなものだ。しかし、論点を整理すれば違いは明確。結論から言えば「価値観の違い」ということになる。

 まず、本来両者はエリア的にあまり競合しなかった。マンションは土地に限りがある都心部が中心。戸建ては土地に余裕がある郊外がその供給の中心エリア。従来、同じ予算で考えるのなら「狭くても都心や駅に近いマンションにするか、ちょっと不便でも伸びやかな戸建てを選ぶか」ということになっていた。

 時々、共存して開発されている場合もある。それはだいたいが近郊エリア。ひとくくりの大きな土地があって、例えば「マンション500戸、戸建て150戸」といった具合に分けて開発される。こういった場合、戸建てのほうの価格が2、3割高くなるので、両者は競合しない。

 ところが、最近の東京都心では珍しい現象が起きている。床面積割合で考えると、マンションとミニ戸建ての価格があまり変わらないか、むしろ戸建てのほうが安くなっているのだ。いったいどういうことだろう。

 例えば、東京都新宿区だと80平方メートル程度の新築マンションを購入する場合、今は8000万円~1億円以上の予算が必要だ。ところが、3階建てのミニ戸建だと6000万円台から選べる。

 その原因は、東京都心のマンション価格がバブル化してしまったからに他ならない。

 2012年頃から東日本大震災の復興事業によって建築費が値上がりしていたところに、2013年初めからアベノミクスが始まり、新築マンション価格は値上がり傾向にあった。そして2014年10月、日銀の黒田総裁がぶっ放した「黒田バズーガ2」という異次元金融緩和によって都心のマンション価格は一気にバブル化した。

 それを買ったのは相続税対策の富裕層と、円安によって殺到した外国人。この2つの「買い」勢力によって、都心のマンション価格は4年前に比べて軽く1.5倍以上になっている。しかし、それは「住むため」という実需による買いではない。購入の大半は投資と投機が目的だ。

 一方、新築のミニ戸建てというのは常に「住む」ことを目的とした実需層に買われる。外国人が投資目的で戸建てを買うことはない。ましてや節税効果の薄いミニ戸建てを、富裕層が相続税対策に買うことはない。

 都心の新築マンションはバブル化したのに、ミニ戸建ては堅実な需要しか生まれないので価格があまり上昇しなかった。その結果、都心では価格が逆転してしまった、というのが現状なのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

東日本大震災発生時、ブルーインパルスは松島基地を離れていた(時事通信フォト)
《津波警報で避難は?》3.11で難を逃れた「ブルーインパルス」現在の居場所は…本日の飛行訓練はキャンセル
NEWSポストセブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
宮城県気仙沼市では注意報が警報に変わり、津波予想も1メートルから3メートルに
「街中にサイレンが鳴り響き…」宮城・気仙沼市に旅行中の男性が語る“緊迫の朝” 「一時はネットもつながらず焦った」《日本全国で津波警報》
NEWSポストセブン
津波警報が発令され、ハワイでは大渋滞が発生(AFP=時事)
ハワイに“破壊的な津波のおそれ” スーパーからは水も食料品も消え…「クラクションが鳴り止まない。カオスです」旅行者が明かす現地の混乱ぶり《カムチャツカ半島地震の影響》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
夜の街での男女トラブルは社会問題でもある(写真はイメージ/Getty)
「整形費用返済のために…」現役アイドルがメンズエステ店で働くことになったきっかけ、“ストーカー化した”客から逃れるために契約した「格安スマホ」
NEWSポストセブン
牛田茉友氏はNHKの元アナウンサーだったこともあり、街頭演説を追っかける熱烈なファンもいた(写真撮影:小川裕夫)
参院選に見るタレント候補の選挙戦の変化 ラサール石井氏は亀有駅近くで街頭演説を行うも『こち亀』の話題を封印したワケ
NEWSポストセブン
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
技能実習生のダム・ズイ・カン容疑者と亡くなった椋本舞子さん(共同通信/景徳鎮陶瓷大学ホームページより)
《佐賀・強盗殺人》ベトナム人の男が「オカネ出せ。財布ミセロ」自宅に押し入りナイフで切りつけ…日本語講師・椋本舞子さんを襲った“強い殺意” 生前は「英語も中国語も堪能」「海外の友達がいっぱい」
NEWSポストセブン
大日向開拓地のキャベツ畑を訪問された上皇ご夫妻(2024年8月、長野県軽井沢町)
美智子さま、葛藤の戦後80年の夏 上皇さまの体調不安で軽井沢でのご静養は微妙な状況に 大戦の記憶を刻んだ土地への祈りの旅も叶わぬ可能性も
女性セブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト
NYの高層ビルで銃撃事件が発生した(右・時事通信フォト)
《5人死亡のNYビル乱射》小室圭さん勤務先からわずか0.6マイル…タムラ容疑者が大型ライフルを手にビルに侵入「日系駐在員も多く勤務するエリア」
NEWSポストセブン