阪神の内回り、芝3000メートルは年にこのレース1回のみ。1着に天皇賞の優先出走権が与えられるが、それ以上に味わいのあるレースだ。数々の名馬を世に送り出した調教師・角居勝彦氏による週刊ポストでの連載「競馬はもっともっと面白い 感性の法則」より、阪神大賞典では3着に終わったものの、ヨーロッパの騎手の手綱さばきに着目するきっかけとなった馬、ポップロックについて語った。
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なんとも妙味のあるコースです。しかし角居厩舎では2、3着が多くて一度も勝っていない(笑い)。それでも好きなレース。天皇賞の前哨戦だけとはいえない、奥行きがある。
6つのコーナーがあり、立ち回りの器用さが必要で、上がり勝負が基本。しかし直線が短いために、長距離戦としてはペースが早くなりがちです。勝ち切るには絶対的スタミナが不可欠、むしろ天皇賞よりも長距離適性が問われるところもある。
名勝負が多いのも特徴でしょうか。古くは1996年のナリタブライアンとマヤノトップガンのマッチレース。2012年のオルフェーヴルの大逸走なども印象的でしたが、昨年もいい競馬でした。
ゴールドシップに貫禄の3連覇を許したものの、2着のデニムアンドルビーは1馬身4分の1差。道中、長く並走し、先に出られてもぴったりマーク。7番人気ながらしぶとく食い下がりました。
そんな中で、思い出すのは2008年のポップロックです。スタートから道中を3番手で我慢して、直線のキレを狙った。しかし迫り切れずに3着でした(1着アドマイヤジュピタ、2着アイポッパー)。最後のコーナーまでじっとタメて、一気に突き抜ける。そんな競馬ができる馬です。
ポップロックは開業当初から預かり、ずっと厩舎を見守ってくれた馬でした。凱旋門賞などGI5勝のエリシオ産駒。強い競馬ができる血統で、いつかはヨーロッパで戦いたい私の思いにすっと寄り添った。それで、デルタブルース、ハットトリックの調教を担当した調教助手に任せました。
GI勝ちはなかったものの2006年と2007年の目黒記念(2500メートル)を連覇。また2006年のメルボルンカップではデルタブルースの2着に入り、角居厩舎はワン・ツーフィニッシュという快挙を成し遂げることができたのです。