思い出されるのは昨年1月にISによって拘束・殺害動画が公開された後藤健二氏のケースだ。安田氏の安否について前出の鈴木氏はこう指摘する。
「ヌスラ戦線の兵士に取材したところ、公開された動画にヌスラ戦線のロゴが入っていないことを不思議がっていました。過去の例とはそこが違うそうです。一言でヌスラ戦線といっても、組織の中には様々なグループがある。安田氏の拘束は、ヌスラ戦線の中にいる外国人義勇兵グループが独自に動いて行なわれたものではないでしょうか。取材した兵士も、安田氏のことを知らなかったですから。
ISと違い、ヌスラ戦線は動画公開後に身代金取引で解放されるケースもあります。まだ生存している可能性が高いと信じています」
動画が公開されたのは、身代金を求める交渉のために安田氏の生存を証明する必要があったからなのか。安田氏が消息を絶ってから、まもなく10か月になろうとしている。
※週刊ポスト2016年4月8日号