コンビニ業界3位のファミリーマートと同4位のサークルKサンクスが経営統合することに伴い、“新生ファミマ”の事業会社トップに企業再生支援コンサルを手掛けるリヴァンプの澤田貴司氏(58)が招聘されたことは当サイト(2016年2月9日)でも報じた通り。
この人事が一際注目されたのは、ファミマのライバルであるローソンの玉塚元一社長(53)と澤田氏が20年来の「盟友」だったこと。かつてファーストリテイリングの柳井正氏(代表取締役会長兼社長)の下で共にユニクロ経営を託され、後にリヴァンプも共同設立するほど気心の知れた仲。その2人が時を経てコンビニ界で“ガチンコ対決”することになったからだ。
ところが、3月28日に突如ローソンが会見を開き、玉塚氏のCEO(会長兼最高経営責任者)就任と、これまで副社長だった竹増貞信副社長(46)をCOO(社長兼最高執行責任者)に昇格させる人事(6月1日付)を発表したために、業界内では「玉塚氏が澤田氏との直接対決を避けたのではないか」との憶測まで呼んだ。
ローソン人事の真の狙いは何なのか──。『月刊BOSS』編集委員の河野圭祐氏がいう。
「もちろん、澤田氏と同じ土俵で戦うのは正直やりにくいと感じていたのかもしれませんが、ローソンの社長交代はある意味では既定路線でした。
玉塚氏が2年前に社長に就任した際、大株主の三菱商事から竹増氏を連れてきたのは、もっと三菱のグループ力を活かしてコンビニ事業を拡大させたかったからに他なりません」
ファミマのコンビニ統合話にも親会社である伊藤忠商事の意向が大きく反映されたように、いま、コンビニ経営は商社の存在抜きには語れない。河野氏が続ける。
「商社は原材料の調達や物流部門の強化などバックヤード的な役割もさることながら、幅広い取引先を持っているために、業界の垣根を越えたアライアンスも組みやすい。玉塚氏は自ら三菱商事に乗り込んで『もっと覚悟を示してほしい』と申し出たそうですが、それだけ商社のネットワークに頼らなければ生き残れないという危機感の表れともいえます。
ローソンは近年、高級スーパーの成城石井をはじめ、ドラッグストアや映画館など異業種の買収を繰り返しながらコンビニ事業とのシナジー効果を狙ってきました。単に店舗数を増やす規模の追求ではなく、付加価値をつけて差別化する戦略です。しかし、自力でM&Aを仕掛けるにも限界があります。そこで、より三菱商事のバックアップが必要になったのでしょう」