「少しでも仁美さんの負担を軽減するため、乙武さんは帰宅が夜10時を過ぎる日は自宅に帰らず、仕事部屋に泊まることが夫婦の“暗黙のルール”になったそうです。乙武さんのオフィスには住み込みのボランティアスタッフがいて、生活のサポートをしてくれますから」(前出・知人)
乙武氏は3人の子供の父親であると同時に、3年間の小学校教員経験があり、保育園の経営にかかわるなど、「イクメン」としての顔も持つ。だが、実際に直面する育児は、彼にとってきわめてハードルの高いものだった。
過去の女性セブンのインタビューで乙武氏は、子供のおむつを替えたり、抱っこをしてあやしたり、お風呂に入れてあげたりといった育児ができないことへの葛藤をこう率直に明かした。
《目の前に子供がいるのに何もしてあげられないんです。息子が目の前で危ない目にあっているときでも助けてあげることができない》
その一方で育児と介助と、妻の負担は大きくなるばかり。出産を境に夫婦の間に生じたわずかな溝は、月日を経るごとに大きくなっていった。乙武氏は『サンデー毎日』(2015年11月1日号)の対談で当時をこう振り返っている。
《妻は出産後にどんどん子どもとの距離を縮め、絆を築いていく。その姿を目にして焦燥感と孤独感みたいなものに襲われました。正直一番しんどい時期でしたね》
前出・知人が語る。
「疲れた妻を見た乙武さんは自分の無力さを責め、“自分が家にいるとかえって妻を疲れさせる。帰るのは妻に悪い”と思いつめ、なるべく自宅に帰らないようになったんです。周囲の人に“疲れ果てた妻を抱きしめることすらできない自分が情けない”という苦しい気持ちを語っていました」
※女性セブン2016年4月14日号