2015年12月、広島県府中町立府中緑ケ丘中学校3年の吉田雄一くん(仮名・享年15)が誤った万引き記録による生徒指導が原因となり、自ら命を絶った。発端は、2015年11月に行われた進路に関する生徒指導だった。雄一くんは第一志望が公立高、第二志望は私立高だったが、私立は「専願受験」を希望していた。出願には、学校長の推薦が必須とされる。雄一くんは中1の時の素行によって、その「専願が認められない」という結果が担任から伝えられた。
同校ではこれまで、3年生の1年間に触法行為があったか否かを推薦の基準としていたが、昨年11月より改定。校長判断により、1年生以降のすべての触法行為が対象となった。雄一くんには中1の時に万引きをした記録が学校の電子データにあり、それを理由に推薦が許可されなかった。
しかし、この記録は誤り。万引きをした生徒の名前が誤って雄一くんの名前でデータに入力され、その後に誤りが発覚したが、データは修正されることなく、ずさんに放置され、この誤った記録により、「専願はできない」と伝えられた。保護者との三者面談が行われる日、雄一くんは自宅で、たったひとり、命を絶った。
推薦入試ができなくなったからって死ななくても、高校受験の先にはまだいくらでも人生を挽回できるチャンスがあるのに、何も死ぬことはないじゃないか──そんな思いを胸の一端に女性セブンは広島へ向かった。
広島市に隣接する人口5万人の府中町は、施設や病院も整い、広島市のベッドタウンとして人気がある土地。
卒業式がすでに終わった緑ケ丘中学校に通うのは在校生のみ。校門から出てくる生徒に声をかけても、答えるどころか、目も合わせない。
「知りません」
「わかりません」
示し合わせたようにこんな言葉だけが子供たちからは繰り返された。地元住民らによると、緑ケ丘中学校は、「ほんの2~3年前まではひどい学校だった」という。
「校内暴力もあったし、近所のコンビニにたばこを買いにきた生徒を見たっていう人もいる。1日に2回も学校にパトカーが来たこともあったし、荒れ放題。万引きする生徒なんて何人もいて、近くのショッピングモールで出禁になった子もいたほどでした」(中学校近くのクリニック従業員)
雄一くんが入学したときも、校舎のガラスを割る生徒や万引きする生徒がいるなど、まだ校内は荒れていた。それが、たった2~3年で、“落ち着いた”という。
「学校は相当頑張ったみたいだったけど、でもさ、そんなすぐに落ち着くってどういうこと? と思って、保護者の人に聞いたら、『先生が管理している感じで、生徒は不満を持っている子が多い、ってウチの子が言っている』って。あぁ、押さえつけて落ち着かせたんだなって心配していたんですよ」(同前)