広島県府中町立府中緑ケ丘中学校3年の男子生徒が2015年12月に自殺していたことが明らかになった。その原因は、誤った万引きの記録だった。
実際にはしていないにもかかわらず、男子生徒が過去に万引きをしたとの記録が学校側に残っており、それを理由に高校への推薦を受けられなかったのだ。男子生徒は三者面談の日に自殺した。
誤った記録は論外だが、こうした学校内での指導による子供の自殺は、今回に限ったことではなく、驚くべきことに“決してめずらしくはない”事件だ。
教師による指導をきっかけに生徒が命を絶つ「指導死」は、平成に入って61件。遺族の希望で公にされないケースも含めると、実際にはもっと多くの指導死が存在すると考えられている。しかも、61件のうち10件が、今回のような“誤った指導”による「冤罪型」とされている。
『追いつめられ、死を選んだ七人の子どもたち。「指導死」』(高文研刊)著者で、「指導死」親の会・代表世話人の大貫隆志さんが言う。大貫さん自身、指導死により、16年前に中2の息子を失った。
「指導死とは、生徒指導が行われ、その結果として子供が死に追いつめられることをいいます。自殺といってしまうと自ら死を選んだように捉えられますが、追いつめられた結果だということです。学校でのいじめや暴力は社会的に問題視され関連法も整備されてきましたが、教師の指導で死ぬということについては認知も浅く、まだまだ問題視されていないように思います」
北海道札幌市に住む斎藤加奈子さん(仮名)は高校1年生だった息子(享年16)を3年前に亡くした。吹奏楽部で熱心にトランペットを吹いていた彼は、同級生部員から嫌がらせを重ねられた末に爆発した怒りをメールにぶつけたところ、指導を受けたのだ。嫌がらせへの反論と知っても教師は取り合わず、メールの文面は“暴言”とみなされ、母親同伴で指導を受け反省文を書かされた。
加奈子さんはなぜ、息子だけが一方的に指導されたのか、今も納得がいかない。
「息子は吹奏楽部を本当に一生懸命頑張っていて、先輩から1年生のリーダーも任されましたが、いつしか同級生とすれ違って休みがちになったりして。自分が参加していない同級生部員のLINEグループがあり、そこで陰口を言われていることを知ってつい売り言葉に買い言葉で、乱暴な言葉で反論してしまったんです。メールを送った背景に関係なく、息子だけが反省文と謝罪を求められました」(加奈子さん)
その後、メールトラブルになった同級生部員にも自分から歩み寄った。だが関係修復はうまくいかず、またしても顧問の逆鱗に触れてしまう。