「給与明細」というと、総支給額と手取り額のところだけ確認してゴミ箱行き、という方も多いだろう。しかし、「それは大損なのです」というのは元国税調査官で、このほど『知らないと損する給与明細』(小学館新書)を上梓した大村大次郎氏だ。
給与明細には、収入だけでなく、貯蓄や税金、社会保険に関する情報が満載だ。天引きされている税金や社会保険の額を減らすことができれば、当然のごとく手取り額は増える。税務署員たちが密かにやっている究極の節税術を大村氏が公開する。
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「税務署員が普段やっている王道の節税術として、扶養家族を増やすというのがあります。実は健康保険上の扶養家族と税法上の扶養家族とは違いがあるからです。健康保険の場合、被扶養者は被保険者に生計維持(年収130万円未満で被保険者の収入の半分未満の収入)されているのが条件となり、扶養の範囲は3親等内の血族、3親等内の姻族(いずれも75歳未満)となっています。
ところが、所得税では、扶養の範囲は「6親等内の血族もしくは3親等内の姻族」となっているのです。6親等内の血族というのは幅広く、自分の親族であれば従兄弟の子どもや、祖父母のきょうだいでも扶養に入れることができます。3親等内の姻族ということは妻の叔父叔母でも扶養に入れることができます。
税務署員たちは条件に合う人は片っ端から扶養に入れています。一般的なサラリーマンで税率は10~20%だから1人扶養が増えると年間7万円から11万円の節税になります。3人増やせば、それぞれ3倍になるわけだから、税務署員たちが躍起になるのも理解できます」
──扶養を増やすのはそんなに簡単なことなのでしょうか。
「たとえば、遠方に暮らす母親が未亡人で遺族年金で生活していたとしましょう。税法上、遺族年金は収入とはなりませんので、いくら高額の遺族年金をもらっていても非課税です。しかも、自分の扶養に入れられるわけですから、手取りが増えた分を親に仕送りすることもできますよね。
また、両親が健在でも65歳以上の人であれば、公的年金収入が158万円以下であれば扶養に入れられることができます。たとえば、78歳の父と73歳の母がそれぞれ140万円ずつ年金をもらっていたとしましょう。世帯収入とすれば年間240万円ですからごく平均的です。しかし、個人で考えれば158万円以下なので2人とも自分の扶養に入れられるというわけです。
しかも、老人扶養親族の場合、その年の12月31日現在の年齢が70歳以上の人だと、通常の一般控除額が38万円なのに対して、一人あたり48万円と10万円も高いのです。このケースでいうと96万円の控除が受けられるというわけです。
また、最近では失業して中年フリーターになる方も多いですが、そういう方も条件さえ合えば扶養に入れられます。離婚して元奥さんが親権を持っていたとしても、お子さんが元奥さんの扶養になっていなければ、もちろん、扶養に入れられます」
──生命保険のかけ方でもコツがあるとか。
「給与明細で生命保険料が天引きされていることも多いと思います。これは保険会社が会社と提携して天引きをしているからです。天引きをしている場合は、保険会社からの団体割引がありますので、若干保険料が安くなります。しかし、それ以上に保険料を節約する方法があります。それは年払いにすることです。
割引率は会社によって違いますが、大体3~5%です。毎月2万円程度の保険に入っているとしたら24万円の3~5%なので7200円から1万2000円くらい安くなります。公的年金の不安から個人年金保険に入っている方も多いでしょう。この場合も、やはり年払いにすれば3~5%が安くなります」