4月4日にスタートしたNHK朝ドラ『とと姉ちゃん』が早くも話題を呼んでいるが、高畑充希(24)が演じるヒロイン・小橋常子のモデルとなったのは、天才編集長・花森安治とともに婦人誌『暮しの手帖』を創刊した大橋鎭子(しずこ)だ。
「衣・食・住」の生活全般をテーマとして1948年に創刊された『暮しの手帖』には、数多くの大作家が寄稿している。川端康成もそのひとりだ。
「鎭子さんとは新聞社時代からのお付き合いだったそうです。彼女は粘り強く執筆依頼し、何度も断わられ、最後は涙を流しながらも原稿を書いてもらったそうです。以来、川端先生も“大橋君、大橋君”と鎭子さんを可愛がるようになり、『暮しの手帖』の創刊号にも寄稿しています」(鎭子を知る出版関係者)
志賀直哉は『暮しの手帖』の大ファンだったという。
「『暮しの手帖』に掲載されたカレーを自分で作ったら美味しくできた。それで“こんな役立つ本はない”と各方面に宣伝して回ったといいます。鎭子さんが志賀先生のご自宅にうかがったときにも、そのカレーを振る舞ってくれ、“これが志賀家の味になった”と喜ばれていたそうです」(同前)
天才・花森編集長の辣腕が同誌を大きく成長させたことは間違いない。しかし、彼ひとりでは成立していないと話すのは、元『暮しの手帖』の編集部員で『花森安治の編集室「暮しの手帖」ですごした日々』の著書を持つ唐澤平吉氏だ。
「花森さんが“頭脳”で、鎭子さんが行動に移す。ふたりは本当にいいコンビでした。私たちには怒鳴りつける花森さんも彼女には決して怒りませんでしたから。やはり一目置いていたと思います」
生涯独身を貫いた鎭子。それも花森の助言だった。彼女の旧友が語る。
「鎭子さんは花森さんから“あなたは結婚してはならない。会社と結婚しなさい”と言われ続けたそうです。その教えを愚直に守ったんです。でも、気になる男性もいたんですよ(笑い)」