重い合併症によって最悪の場合死に至る糖尿病。患者は予備群も含めれば日本に2000万人いるといわれる。その予防・治療を巡って目下、最大の注目点となっているのが、食事療法を「カロリー制限」にするか「糖質制限」にするかという論争である。最新の医学的見地から、どちらが良いのか検証した。
●どちらが減量できるのか
肥満が糖尿病発症の危険因子であることは、糖質制限派・カロリー制限派ともに認めている。いずれの食事制限もダイエット効果が期待できるが、どちらのほうが痩せられるのか。
糖質制限で劇的な減量効果があったとするエピソードを耳にすることは少なくない。加えてそれを裏づける学術研究もある。
新潟労災病院が昨年秋に日本肥満学会で報告した比較試験では糖質制限の優位性が示された。肥満外来を受診した人を糖質制限群とカロリー制限群に分けて1年後の体重減少を調査した結果、カロリー制限は平均4.6キロ減だったのに対し、糖質制限では8.5キロも落ちていた。
ただし、こうした結果に対してカロリー制限派からの反論もある。2008年にイスラエルで行なわれた研究によると、糖質制限は開始から半年まではカロリー制限を上回るペースで体重が減るが、2年程度を過ぎたあたりからカロリー制限との差がなくなると指摘している。つまり糖質制限はリバウンドに注意が必要ということだ。
イシハラクリニック院長の石原結實氏も、「糖質制限は長期的に行なう選択としてはまだ方法が確立されていない部分がある」と指摘している。