「日清カップヌードル」のCMが抗議によって放送中止になった。大人力コラムニスト・石原壮一郎氏が騒動から考える。
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いやはや、日清食品にはガッカリです。批判が多かったからあわてて放送中止にしたのか、最初から「たぶん批判されるだろうけど、そのときは放送中止にすればいいよ。そこでまた話題になっておいしいから」と予定調和な炎上商法だったのか、どちらにせよ今回はガッカリさせられました。
おっと、勢いよくガッカリしすぎて、いきなり本題に入ってすいません。3月30日からカップヌードルの新CM「OBAKA’s UNIVERSITY」シリーズ第1弾がスタートし、けっこうあちこちで「面白い」「大胆」と評判になっていたんですが、批判の声があったということで4月8日に放送中止が発表されました。
銅像みたいなビートたけしが学長役で、矢口真里、小林幸子、新垣隆氏、ムツゴロウさんといった「いわくのある人」たちが先生役を務めて、自虐ネタを繰り出してくれるアレです。CMがスタートするとき、日清食品は企画意図をこうぶち上げました。
〈現代のSNS時代は、非寛容な時代と言えます。挑戦すれば、揶揄される。失敗すれば、叩かれる。このままでは、みんながちぢこまり、だれも挑戦しなくなってしまう。〉
〈人間は誰だって、一度や二度の失敗はする。「何かに夢中になって、バカになる力」「たとえ失敗をしても、這い上がる力」いま求められるこの2つの力を、説教くさくなく、カップヌードルらしいユーモアでメッセージしたい、と考えました。〉
たいへん素晴らしい! 全面的に同意するし、明らかに物議を醸すCMを作ることで身を持って挑戦する大切さを示してくれた日清食品に、心から敬意を表したいと思います。いや、思っていました。CMを放送中止にするまでは。
しかし、結局は他人の失敗を許したくない人たちの非寛容な声にちぢこまって、こういう残念な展開になりました。皮肉なものです。批判が集まったのは、どうやら矢口真里を起用したことに対して。「危機管理の権威」の准教授として登場し、教壇から「二兎を追うものは一兎をも得ず」と学生に教えるという設定で、いわば自身の不倫スキャンダルをネタにしているところも、批判する側に大義名分を与えてしまったようです。
最初からある程度の批判は覚悟していたはずですが、このところの不倫スキャンダルブームの影響で風当たりが予想以上に強かったのでしょうか。狙いは勇ましかっただけに、批判の声が上がっても「いや、中止にはしません」と毅然とはねつけてくれたら、さらに評価が上がったことでしょう。
あるいは、批判が来て放送を中止して、それがまた話題になるまでをハナから織り込んだ企画……ってことはないですよね。狙いではないにせよ、心のどこかで「そうなったらそうなったで」と思っていたとしたら、出演したタレントさんにしてみればいい面の皮です。イメージダウンの被害を被るのは、もっぱら出演者のほうですから。