「芝居は毎日進化するし、お客さんの前に晒されることで、いろんなことを日々発見するんです。それを楽しんでいる。千秋楽の1週間ぐらい前から、もう公演が終わっちゃうんだと思うと寂しくてね。食事や旅もみんなと共有するのがいいんですよ。できれば一年中、舞台をやっていたいくらいです」
これまでに4本の舞台で風間を起用し、『家庭内失踪』では役者としても対した岩松は風間をこう評する。
「風間さんには、攻めも守りもできる自在さがある。大相撲で言えば、突進する柏戸と柔軟に受ける大鵬。風間さんはその両方を持っている人なんです。それでいて、僕が役者として大事だと思う『余計なことをしない』も守っている。稽古でも最初からこうだと決めてかかることなく、何もつくらないところから徐々に形にしていく。ちゃんと味も出しながら、そんなふうに演じられる役者は他にいないですよ」
一方で風間は、一人芝居も継続している。『カラオケマン』は海外でも絶賛され、10年には5時間15分に及ぶ5部作一挙上演に挑戦した。6月29日から始まる『正義の味方』では95歳の老人を演じることになっている。
落語、舞台、一人芝居、そしてひっきりなしに舞い込んでくるテレビと映画の仕事。そのすべてを糧とし、風間はさらに芸の幅を広げていく。今月で67歳となる彼は、何処をめざすのか。
「森繁久彌先生のような味わいが出る役者になりたいと思っています。『品格と色気と哀愁と』という森繁先生の本があり、僕はそのタイトルを座右の銘にしているんです。もっと年をとっても、この3つを持っているような役者になっていたらいいですね」
撮影■江森康之 取材・文■一志治夫
※週刊ポスト2016年4月15日号