いま中国では、いたるところで、給料の未払いや劣悪な労働環境に抗議する労働者のデモやストライキが頻発している。
中国政府の公式統計では昨年の1月から9月までの9か月間で1万1000件以上。香港に本拠を置く、中国の労働運動の調査機関「中国労工通信(CLB)」の調査では、昨年12月1日から春節(旧正月=日本の元旦に当たる)の2月8日までの2か月間で1050件も発生。3月に黒竜江省で発生したデモには炭鉱労働者ら数万人が参加し、数千人の警官隊と衝突した。
「中国は社会主義国で、本来は労働者が主役の国だったはずだ。その労働者が虐げられ、彼らの怒りが爆発している。今後、手が付けられないほどの大きな労働争議が起き、暴動に発展する可能性がある」とCLBの韓東方代表は不気味な予測を口にした。ジャーナリストの相馬勝氏がリポートする。
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中国の労働者の権利の保障などを目的とする中国人力資源・社会保障部(日本の旧労働省=現厚労省に相当)トップの尹蔚民・部長(閣僚級)は昨年1月から9月までの9か月間で、給料未払いによる労働争議は全部で1万1007件発生しており、これは前年同期比34%もの急増ぶりであることを同部の会議で明らかにした。
同部では給料未払い企業に対して、速やかに支払うよう勧告。従わない場合は、警察や検察などの司法機関に告発し、経営幹部の逮捕・起訴などの法的手続きの実行をも辞さない構えだが、黒竜江省の炭鉱労働者デモでも分かるように、企業側もない袖は振れない状況だ。
とくに、石炭業界の不況は深刻だ。石炭はここ数年、在庫が大量にあまり、値段が急落。全人代の会議で「石炭はジャガイモよりも安くなった」と中国一の石炭の産地である山西省の王儒林・党委書記は嘆く。
深刻な不況にあえぐのは石炭業界ばかりではない。鉄鋼業界もその例に漏れない。やはり全人代では、「少し前まで、鉄鋼製品はまるで白菜のような価格だったが、現在は白菜の価格すら下回っている」との発言が伝えられた。石炭や鉄鋼製品を野菜の価格と比較するのは無理があるが、それほど深刻な状態に陥っていることは容易に理解することができよう。