「1戸1票だったから保たれていた平等感は薄くなるでしょう。それだけでなく『あの人は何号室だから何票持っている』といったことが明確になります。最上階の南向きの部屋を持っている人の意向が通りやすくなり、低層の日当たりの悪い部屋に住んでいる人は、従わざるを得なくなるかもしれません」(須藤氏)
今回の改正ではそういったマンション内格差の拡大を防ぐ効果が期待される項目もある。それが、管理組合の理事に、マンション管理士や弁護士、建築士など居住者以外の第三者を登用できるというものだ。
ただ、第三者がわずかしか議決権を持たない人たちの味方になってくれるとは限らない。個人向けに不動産コンサルティングを行なう、さくら事務所のマンション管理コンサルタント・土屋輝之氏が指摘する。
「専門家を招くということは、彼らに報酬を支払うということです。その報酬は管理費から捻出されますから、管理費の値上がりにがります。また、その専門家が、多くの議決権を持つ人の意に沿うことも十分に考えられます」
これでは、弱者を守るための措置が、かえって強者を利することになってしまう。こんなことなら戸建てか賃貸マンションにしておけばよかった──そう嘆いても後の祭りである。
これまで以上にご近所付き合いを密にし、味方を増やしておくことしか防衛手段はなさそうだ。
※週刊ポスト2016年4月22日号