分譲マンションの管理組合総会で「格差」が生じようとしている。これまで原則として「1戸1票」だった議決権が、国交省の指針変更によって、住戸の資産価値に応じて重みが変えられるようになったからだ。ほとんど周知されていないこの「改正」は、マンション住民に新たなトラブルを生む火種になる。
『まちがいだらけのマンション管理タブー集』(誠文堂新光社刊)著者の須藤桂一氏(CIP代表)が指摘する。
「マンションの建て替えには、全住戸の5分の4以上の区分所有者から賛成を取り付ける必要があります。
5分の4という数字はもともとハードルが高いのですが、目の前の投資利回りしか考えず建て替え費用を負担することなど頭の片隅にもない人が議決権を多く持つと、なかなか建て替えができず、老朽化が進むマンションに住み続けなくてはならなくなるでしょう」
マンションというコミュニティの維持も難しくなりそうだ。湾岸エリアのタワーマンション4階の住人が嘆く。
「1階のエレベーターホールで、上層階行きのエレベーターを待つ人と、下層階行きのエレベーターを待つ人との間には微妙な空気が流れています。エレベーターに乗ってからも、私が4階のボタンを押した後に、一緒に乗り込んだ人が12階のボタンを押すと、劣等感に苛まれます。
被害妄想かもしれませんが、総会で『下の人』と言われたときには本当に腹が立ちました。上の階に住んでいるのが、そんなに偉いのでしょうか」
そういったもともとマンション内にある“格差”が、議決権にまつわるルール変更がきっかけでいっそう開いていく懸念がある。